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カレントアウェアネス
No.287 2006.03.20
CA1590
刊行物レビュー
メールマガジン『カレントアウェアネス-E』で見る2005年
2005年も図書館界では様々な事件,新たな取組みが見られたが,図書館界の最新ニュースを皆様にお届けする『カレントアウェアネス-E』ではどのように図書館界を取り上げたのであろうか。
『カレントアウェアネス-E』2005年の概況
2005年は,No.51(1月19日)からNo.73(12月21日)まで計23号145本の記事を紹介した。当館ホームページ「図書館に関する調査・研究」の「『カレントアウェアネス』『カレントアウェアネス-E』テーマ別記事一覧」(1)で付与したキーワード別に145本のテーマ別内訳(6回以上取り上げたテーマに限り)を算出したところ,表のようになった。
2005年に最も多く取り上げたのは,著作権に関連する記事であった。以下,米国・英国の図書館界の動向,図書館資料のデジタル化,図書館政策,インターネットに関する記事などが続く。
表 『カレントアウェアネス-E』で取り上げたテーマ(2005年)
テーマ | 回数 | テーマ | 回数 |
著作権 | 18 | IFLA | 7 |
英国 | 17 | ガイドライン | 7 |
米国 | 17 | 韓国 | 7 |
デジタル化 | 13 | 情報検索 | 7 |
文献紹介 | 11 | レファレンス | 6 |
国立国会図書館 | 9 | 公共図書館-英国 | 6 |
図書館政策 | 9 | 国際会議 | 6 |
インターネット | 8 | 中国 | 6 |
オープンアクセス | 8 | 電子図書館 | 6 |
*『カレントアウェアネス』『カレントアウェアネス-E』テーマ別記事一覧で付与されたテーマ別の記事本数。
*6回以上取り上げたテーマのみ掲載。
*一本の記事に複数のテーマを付与しているため,「回数」の合計は記事の本数とは一致しない。
著作権
一口に著作権といっても様々な話題があるが,『カレントアウェアネス-E』で2005年に取り上げたものでは,各国の著作権法改正動向(E319,E393)のほか,Google Print(のちにGoogle Book Searchに改称)プロジェクト(E340)をはじめ図書館資料のデジタル化に際しての著作権処理の議論が多かった。
英国における図書館界の動向
英国に関しては,2004年の後半から2005年の前半にかけて,博物館・図書館・文書館国家評議会(MLA)など関係機関から公共図書館サービスの再編を促す報告書が相次いで公表されたことから,その都度『カレントアウェアネス-E』でも紹介した。紹介した調査報告書の一例を挙げると,英国読書協会の『読書を楽しむ』(E290),レイザー財団の『図書館のビジョン:2015年の公共図書館サービス』(E307),英国下院特別委員会の“Public Libraries”(E313)などがあった。
こうした一連の動きの背景と経緯については,CA1568「英国公共図書館政策への批判と提言」に詳しい。
米国における図書館界の動向
米国は図書館界の動きも活発であることから,取り上げる記事も例年多いのであるが,2005年は,南部を中心に甚大な被害を及ぼしたハリケーン「カトリーナ」(E369,E396),愛国者法の改正法案(連邦捜査機関に利用者情報等を提供することを図書館に求める規定を恒久化することなどを定める)の審議過程(E371など),子どもの図書館利用に対する一定の制限やチェック体制の議論(E325,E342)などがトピックとして目立った。
図書館,図書館資料のデジタル化
ここ数年の図書館界の大きな流れとして見受けられる現象であるが,『カレントアウェアネス-E』でも,図書館のデジタル化,学術情報の電子化・オープンアクセス化といったテーマについては多くの記事を取り上げている(デジタル化13本,オープンアクセス8本,電子図書館6本,電子情報資源5本,電子情報保存5本など)。具体的には,図書館の蔵書をデジタル情報として保存する取組み,ウェブサイトを活用した非来館型の電子図書館,米国国立衛生研究所(NIH)や英国ウェルカム財団が発表した研究成果のオープンアクセス化方針(E297,E338)などである。
2005年に発表された図書館の戦略計画
図書館政策に関しては,各国において図書館の戦略計画が発表されたことを何度か紹介した。米国図書館情報学国家委員会(NCLIS)の将来計画(E308),英国図書館(BL)の戦略計画『図書館を再定義する』(E349),シンガポール国立図書館委員会の“Library 2010”(E356),ニュージーランド図書館情報協会の公共図書館戦略計画(E402)などが挙げられる。図書館の専門性(所蔵する情報,職員ともに)を高めることや,利用者への情報リテラシー教育を推進すること,オンライン情報の提供を強化することなどが共通して述べられている。
インターネット,ウェブサイト検索の動向
インターネット,ウェブの世界で目立った動きといえば,まずGoogleのサービス拡大が挙げられる。Google Scholar(E321),Google Print(E340)をはじめ,2005年中にいくつもの新サービスが開始されたこともあり,関心のある方も多いことであろう(Googleの動きについてはCA1564も参照されたい)。
最近では,米国議会図書館(LC)が計画するWorld Digital Libraryプロジェクトに資金提供を行うことも発表され(E416),図書館界にとってもますます大きな影響をもつ存在となることも予想される。
アジアにおける図書館界の動向
2005年はアジアの動向の紹介にも重点を置き,韓国関連7本,中国関連6本,その他アジア諸国関連6本の記事を紹介した。今後もこの方向を継続していく予定である。
韓国に関しては読書振興策の動向(E376など),中国に関しては図書館資料のデジタル化とこれに関する著作権上の問題(E407など)について数度取り上げた。また,2004年12月のインド洋大津波が図書館界に及ぼした影響についても2度(E282,E420)取り上げた。
ちなみに,『カレントアウェアネス』編集委員および事務局において,2005年の図書館界を特によく象徴する記事,特に印象に残った記事について意見を出し合ったところ,以下のような記事が挙げられた。皆様の関心に合致しているだろうか。
- Googleの動向(E416,E321,E340,E392)
- 自然災害が図書館に及ぼした影響(E282,E369など)
- 国際目録原則覚書の最終草案,RDAやFRARなど新たな目録規則(E301,E363,E372)
- 英国公共図書館のサービス改革,BLの新戦略(E307,E349など)
- オープンアクセスの動向(E297,E338など)
- 米国愛国者法の改正(E343,E371など)
(関西館事業部図書館協力課調査情報係)
(1) 国立国会図書館. 『カレントアウェアネス』『カレントアウェアネス-E』テーマ別記事一覧. (オンライン), 入手先< http://www.ndl.go.jp/jp/library/current/casearch/index.html >, (参照2006-02-16).
Ref.
国立国会図書館. カレントアウェアネス-E 2005年の記事一覧. (オンライン), 入手先< http://www.ndl.go.jp/jp/library/cae/current_e_back2005.html >, (参照2006-02-16).
関西館事業部図書館協力課調査情報係. メールマガジン『カレントアウェアネス-E』で見る2005年. カレントアウェアネス. (287), 2006, 25-26.
http://www.ndl.go.jp/jp/library/current/no287/CA1590.html