カレントアウェアネス-E
No.57 2005.04.20
E319
カナダの著作権法に改正の動き
カナダ政府は3月24日,著作権法改正案の概要を発表した。現行の著作権法は1997年に改正されたものであるが,当時と比較してインターネットはコミュニケーション,研究,教育などの強力な手段となっており,その利用が大幅に増加している。今回の改正では,こうした現状を受けて,音楽ファイルの共有など昨今のインターネットやデジタル技術の利用状況を考慮に入れたものにする。具体的には,1996年WIPO著作権条約およびWIPO実演・レコード条約の規定に沿う形で,インターネット上の著作物の不正利用を防ぐため,著作権者の権限を強化することなどが,改正内容として盛り込まれる見込みである。
その一方で,カナダ政府の声明によると,インターネットサービスプロバイダ(ISP)の情報流通の仲介役としての役割に関しては著作権法上の責任を免除する規定,教育・研究を目的としたインターネット著作物へのアクセス(遠隔教育のための利用など)や,ILLに関して電子的形式での文献提供(CA1545参照)を著作権の制限の対象とする規定など,著作物利用の自由度を高めるような例外規定を設けることも論点として挙げられている。著作権法改正案は今春中に提出され,議会において上記以外の論点も含めた議論が行われる予定である。
Ref:
http://www.ic.gc.ca/cmb/welcomeic.nsf
http://strategis.ic.gc.ca/epic/internet
CA1545