E318 – 公貸権に関するIFLAの立場

カレントアウェアネス-E

No.57 2005.04.20

 

 E318

公貸権に関するIFLAの立場

 

 国際図書館連盟の著作権等法的問題委員会(IFLA CLM)は,4月,公共貸与権(public lending right)に関するIFLAの立場を表明した。その中でIFLAは,(1)公衆への著作物の貸与は文化と教育に欠かせないことから,誰もが自由に無料で利用できる公衆に開かれた図書館サービスを危うくするような貸与権(lending right)の原則には賛成しない,(2)公貸権は文化への報償制度であり,また著作者の経済的・社会的な支援制度であって,その財源を図書館予算から拠出したり,図書館利用者の負担としてはならない,との見解を表明している。

 また,(a)公貸権制度の費用は,国・自治体が図書館予算とは別途に措置すべきこと,(b)基礎的な公共サービスを犠牲にしないと公貸権制度の費用をまかなえない発展途上国では,貸与権を認めるべきでないこと,(c)公貸権を導入する場合には,文化支援の枠組み,あるいは著作権法とは別の法制度のもとで著作者が補償を受ける権利とすべきこと,また図書館員を含むすべての利害関係者の緊密な協力のもとで法制化すべきこと等を勧告している。なお,CLM は2004年8月のIFLA年次大会で公貸権に関する決議を提案したが,採決に至らなかったという経緯がある(E252参照)。

 一方,1992年貸与権指令により公貸権の導入を加盟国に義務付けている欧州連合では,指令の国内法制化が未完了として,欧州委員会が2004年12月にスペイン,アイルランド,ポルトガルを欧州司法裁判所に提訴し,また3月には,イタリアとルクセンブルクの提訴を決定している。

Ref:
http://www.ifla.org/III/clm/p1/PublicLendingRigh.htm
http://europa.eu.int/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/05/347
国立国会図書館IFLAブエノスアイレス大会派遣団.地域の発展,世界の共存のために.国立国会図書館月報.(525),2004,1-3.
南亮一.「公貸権」に関する考察.現代の図書館.40(4),2002,215-225.
E252