カレントアウェアネス-E
No.60 2005.06.15
E340
Google Printの巻き起こす波紋
5月26日,書籍本文検索サービスGoogle Printが試験公開された。当初,出版社向けプログラムとして始まった同事業は,その後,Google Print for Librariesとして大規模な図書館蔵書のデジタル化計画(E285参照)を打ち出したことから,様々な波紋を呼び起こしている。
Google Print for Librariesでは,著作権の切れた書籍だけでなく,著作権保護期間中のものもスキャンし,検索できるようにするという。このことに関して,5月20日,米国大学出版局協会(AAUP)が「大規模で意図的な著作権侵害」ではないかとして抗議の公開質問状を送付した。Google側は,保護期間内のものは検索結果から本文の一部のみしか表示しないようにするなど,著作権に配慮していると強調しているが,AAUPはそもそも許諾を得ずにコピーを作成すること自体が違法ではないかと指摘している。他の出版社や著作権管理団体も抗議の声を挙げており,今後,フェアユースをめぐる議論に発展しそうだ。
一方で,対抗プロジェクトも発表されている。4月には,フランス国立図書館を中心とするEUの19国立図書館が,文化的多様性を確保するためとして,ヨーロッパの文献をデジタル化していく構想を打ち出した。また,5月には,ドイツ書籍出版販売取引業者組合も独自に書籍本文検索サービスを立ち上げる計画を公表している。書籍本文という魅力的なコンテンツをめぐって攻防が激しくなってきている。
Ref:
http://www.infotoday.com/newsbreaks/nb050531-2.shtml
http://www.businessweek.com/bwdaily/dnflash/may2005/
http://print.google.com/
http://www.turkishpress.com/news.asp?id=41081
http://www.heise.de/english/newsticker/news/59940
E285