E1782 – 「カレントアウェアネス-R」からみた2015年のOAの動向

カレントアウェアネス-E

No.300 2016.03.17

 

 E1782

「カレントアウェアネス-R」からみた2015年のOAの動向 

 

 2015年に発信したブログ記事「カレントアウェアネス-R」(CA-R)において,とりあげた分野としては,デジタルアーカイブ(デジタル化),学術情報流通,オープンアクセス(OA)が多かったようです。そのなかから,本稿では,「カレントアウェアネス・ポータル」(CAポータル)でも着目している,OAの観点から2015年の記事を振り返ってみたいと思います。

 まず,各種機関から,研究者・図書館員・出版社を対象とした,OAに関するカリキュラムやガイドが公開されるという動きがありました(ユネスコ,OAPEN-UK,Authors Alliance)。この他,PASTEUR4OA(欧州におけるOA等の政策の発展促進をサポートするプロジェクト)からは,OA方針に関する活動・調査の結果をまとめたレポートや,EU各国のOA方針の実施状況をまとめた報告書(E1725参照)が公開されました。

 米国では,科学技術政策局が2013年に発表した「公的助成研究成果のオープンアクセス指令」に基づき,パブリックアクセスプランを策定する機関(農務省,医療研究品質庁,国立宇宙局,国防総省,米国科学財団,退役軍人省,スミソニアン協会,国立標準技術研究所)や,研究成果をCHORUS(公的助成研究成果のパブリックアクセス拡大に向けて組織された官民イニシアチブ)を通じて公開する機関(米国科学財団,スミソニアン協会,米国物理学会,地質調査所,国立標準技術研究所)が見られました。

 また,欧州では,研究機関等が,Elsevier社,Springer社といった国際的出版社と合意し,各社の電子ジャーナルから出版する,機関所属の研究者の研究成果をOA化する動きが見られました(欧州原子核研究機構,英国のJisc,ドイツのマックスプランク協会)。そのようななか,オランダ大学協会とElsevier社の間では,購読料と論文のOA化に関する交渉が暗礁に乗り上げ,7月には,同協会が所属研究者に対しElsevier社の雑誌の編集責任者を退くよう呼びかけるといった事態が発生しています(最終的には,12月に両者間で交渉が成立しました)。

 日本国内では,京都大学(E1686参照),筑波大学,国際日本文化研究センターと,OA方針を採択する研究機関があらわれました。今後も採択する研究機関が増えてくると思われます。

 CAポータルでは,今後も国内外におけるOAの動向についても注目し,CA-Rで発信していきます。

関西館図書館協力課調査情報係

注:この記事には英訳版(E1782e)があります。

Ref:
http://current.ndl.go.jp/node/28162
http://current.ndl.go.jp/node/29175
http://current.ndl.go.jp/node/30118
http://current.ndl.go.jp/node/28323
http://current.ndl.go.jp/node/29218
http://current.ndl.go.jp/node/28171
http://current.ndl.go.jp/node/28052
http://current.ndl.go.jp/node/28686
http://current.ndl.go.jp/node/30142
http://current.ndl.go.jp/node/28188
http://current.ndl.go.jp/node/29202
http://current.ndl.go.jp/node/29985
http://current.ndl.go.jp/node/29143
http://current.ndl.go.jp/node/28321
http://current.ndl.go.jp/node/29738
http://current.ndl.go.jp/node/29721
http://current.ndl.go.jp/node/28854
http://current.ndl.go.jp/node/30197
http://current.ndl.go.jp/node/28428
http://current.ndl.go.jp/node/30018
http://current.ndl.go.jp/node/30379
E1725
E1686