E1781 – 図書館及び図書館情報学に関する調査研究とは

カレントアウェアネス-E

No.300 2016.03.17

 

 E1781

図書館及び図書館情報学に関する調査研究とは

 

 国立国会図書館(NDL)では,図書館及び図書館情報学に関する調査研究(以下調査研究)を調査研究機関等に外部委託して実施しています。その成果を広く図書館界で共有するために,主に報告書を刊行して,都道府県立図書館・政令指定都市立図書館や各国の国立図書館を中心に,国内外の関係機関に提供しています。また,図書館総合展やNDL館内で成果の報告会も実施しており,その普及に努めています。成果の多くは,「カレントアウェアネス・ポータル」(CAポータル)にも,PDFファイルやEPUBファイル,あるいはテキストデータの形式で掲載しています。

 報告書には,『図書館研究シリーズ』『図書館調査研究リポート』の2つのシリーズがあります。

 『図書館研究シリーズ』は,その刊行が1960年までさかのぼるものであり,古い歴史をもっています。現在,No.40まで刊行しています。一方,『図書館調査研究リポート』は,この調査研究事業がNDL関西館事業部図書館協力課(当時)の担当業務となったのを機に,2003年から刊行を開始しました。現在,No.15まで刊行しています。本稿では,『図書館調査研究リポート』を中心に,最近の調査研究の内容を紹介します。

◯図書館調査研究リポート
 『図書館調査研究リポート』は,2003年以降,ほぼ毎年刊行しています。現在までの刊行タイトルは,次のとおりです。

 

    No.1 デジタル環境下における視覚障害者等図書館サービスの海外動向(2003年)
    No.2 電子情報環境下における科学技術情報の蓄積・流通の在り方に関する調査研究(平成15年度調査研究)(2004年)
    No.3 図書館職員を対象とする研修の海外の状況調査(2004年)
    No.4 電子情報環境下における科学技術情報の蓄積・流通の在り方に関する調査研究(平成16年度調査研究)(2005年)
    No.5 図書館職員を対象とする研修の国内状況調査(2005年)
    No.6 パッケージ系電子出版物の長期的な再生可能性について(2006年)
    No.7 蔵書評価に関する調査研究(2006年)
    No.8 国立国会図書館所蔵和図書(1950-1999年刊)の劣化に関する調査研究(平成17・18年度調査研究)(2008年)
    No.9 地域資料に関する調査研究(2008年)
    No.10 子どもの情報行動に関する調査研究(2008年)
    No.11 電子書籍の流通・利用・保存に関する調査研究(2009年)
    No.12 中国国家図書館の現況(2010年)
    No.13 東日本大震災と図書館(2012年)
    No.14 日本の図書館におけるレファレンスサービスの課題と展望(2013年)
    No.15 地域活性化志向の公共図書館における経営に関する調査研究(2014年)

 

 そのほか,最近では報告書以外の形式で成果を公開した調査研究として,次のものがあります。

  • 「文化・学術機関におけるデジタルアーカイブ等の運営に関する調査研究」(2010年)
  • 「公共図書館における障害者サービスに関する調査研究」(2011年)
  • 「図書館利用者の情報行動の傾向及び図書館に関する意識調査」(2015年)

 調査研究のテーマは,偏ることがないよう幅広く設定しています。CAポータルの掲載ページへのアクセス数についても,とくに目立った傾向はなく,これらの調査研究が万遍なく参照されていることが推測されます。

 刊行当初は,科学技術情報の収集,研修事業,蔵書評価,資料保存など,NDLの事業と関連した内容を比較的多く取り上げていました。No.2では,「今後国立国会図書館が果たすべき役割及び関係機関との連携協力の方向性を明らかにすることを目標としている。」との一文を掲載しており,当時の調査研究の位置づけは,この一文に端的に表れています。

 最近では,地域資料,電子書籍,障害者サービス,レファレンスサービスなど,図書館業務における一般的な事項を取り上げることが多くなっています。これは,調査研究の成果をより広く図書館界で共有することを念頭に置いているためで,NDLの図書館協力事業の一環として行われている調査研究事業の性格がより強く反映されていると言えます。

◯東日本大震災と図書館
 No.13は,「東日本大震災と図書館」と題し,東日本大震災と図書館に関する情報を網羅的に収集し,情報を整理しました。この調査研究は,震災からの復興を支援するためにNDLが重点的に取り組んできた,東日本大震災に関する情報提供の一環です。

 国立の図書館であるNDLだからこそ,各種図書館が単独では実施できないような総合的な調査または大規模調査を行う責務があります。今後も,各種図書館の図書館業務の改善に資するような調査研究を実施して,その成果を図書館界にわかりやすく還元していきます。

関西館図書館協力課調査情報係

注:この記事には英訳版(E1781e)があります。

Ref:
http://current.ndl.go.jp/research
http://current.ndl.go.jp/report/no13
http://current.ndl.go.jp/sinsai