CA1261 – 英国政府、公共図書館の最低基準を作成中 / 松井一子

カレントアウェアネス
No.239 1999.07.20


CA1261

英国政府,公共図書館の最低基準を作成中

6月18日,英国の文化・メディア・スポーツ省(Department for Culture, Media and Sport:DCMS)は,来春の提案に向けて公共図書館の最低基準(minimum standards for public libraries)を作成中であると発表した。政府が利用者にとって最低限必要な図書館サービスを制定することは,英国では初めてである。イングランドの149の図書館行政庁(library authority)は,今後年間計画を立てる際に,この基準に照らして自館の状況を示さなければならないことになる。

DCMSは,'98年9月に地方公共図書館の年間計画の見直しを行い,“Appraisal of annual library plans1998”という報告書を刊行した。刊行にあたりDCMSは,「'64年の公共図書館・博物館法に述べられているように,地方図書館行政庁は“広く効果的な図書館サービス”を供給する法的義務を負う」ことを確認しており,公共図書館のサービス改善のため,DCMSが何らかの基準を示すべきであると提言している。また,この報告書を作成する過程で,15の行政庁が年間計画の練り直しを求められ,サービスを削減しようとしていた6つの行政庁が警告文書を出されている。

一方'98年11月に,政府は「地方政府法案(Local Government Bill)」を提案した。この法案は,“ベスト・バリュー(best value:できる限り効果的かつ経済的に最高のサービスを提供しようとする理念)”により地方政府の提供するサービスを評価し,改善していくというものである。公共図書館のサービス内容はこのやり方にもっとも適していると考えられている。

具体的な内容は,英国図書館協会と地方団体協会(Local Government Association)の協力を得て検討されており,新規購入資料数,開館時間と設置場所,予約サービスの有効性,専門職員の配置などの項目が設けられる予定である。最近は公共図書館のネットワーク構想が発表され(CA1181CA1212参照),電子情報へのアクセスが注目を集めているが,政府は,公共図書館サービスの中心となるのは本,あるいは紙の資料であるという考え方をとっている。スミス文化・メディア・スポーツ相は,基準により的確なサービスがどういうものか知ることができれば,利用者や図書館のみならず,図書館を監督する行政にとっても資するだろう,と期待している。

松井 一子(まついかずこ)

Ref:Department for Culture, Media and Sport. Chris Smith announces setting of first-ever minimum standards for public libraries.[http://www.nds.coi.gov.uk/coi/coipress.nsf/?Open](last access1999.6.23)
Department for Culture, Media and Sport. Appraisal of annual library plans 1998.[http://www.libecon2000.org/Reports/ALP98_1.html](last access1999.6.23)
Libr Assoc Rec 101(1)3,1999