CA1212 – 英国公共図書館ITネットワーク構想に対する政府の回答 / 長嶋佐央里

カレントアウェアネス
No.229 1998.09.20


CA1212

英国公共図書館ITネットワーク構想に対する政府の回答

英国では,1997年10月に図書館情報委員会(Library and Information Commission: LIC)により公共図書館ITネットワーク構想についての報告書「新しい図書館:国民のネットワーク」(New Library: The People's Network)が発表された(CA1181参照)。この報告書に対する政府の回答が,1998年4月に発表された。回答で政府は,情報化時代において,情報技術(IT)を活用したさまざまな目的を達成するために,公共図書館ITネットワークが中心的役割を担うべきであるとの認識から,LICの報告書を支持し,公共図書館ITネットワークの実現へ向けて支援していく姿勢を示している。

公共図書館について,この回答では,英国の公共サービスの中で最も重要視かつ尊重されているサービスの一つで,人々の生活の社会,経済,教育といった側面に重要な役割を果たしているとして,今後ITの進展に伴い,伝統的なサービスである貸出やレファレンスだけでなく,地域情報センターとしてコミュニティでより中心的な役割を果たすことを求めている。また,2002年までに実施する「全国教育ネットワーク」(National Grid for Learnig:学校相互をリンクする全国的なネットワークの構築計画)で,公共図書館をコミュニティ・ネットワークのアクセスポイントとして位置づけている。

公共図書館ITネットワークの実現へ向けた政府の提案は以下のようなものである。

  • LICに公共図書館ITネットワーク作業部会を創設し,その計画,施行,維持管理の任務にあたる
  • コンテンツの作成については,教育のニーズと商業機会を考慮して,資料の電子化を行う(資金は国営宝くじ基金から5,000万ポンド出資)
  • ITに対応できるようにするため,27,000人の図書館職員,教師,学校図書館員を養成する(資金は国営宝くじ基金から2,000万ポンド出資)
  • ハードウェア,ソフトウェア,遠距離通信網などのネットワークのインフラ整備を民間と連携して行う(今後2年間は,文化・メディア・スポーツ省及びウルフソン財団による公共図書館チャレンジ基金から600万ポンド出資)
  • 現在,公共図書館で障害となっている接続費用について,政府が電気通信庁(OFTEL)と通信事業者間で料金の割引交渉を行う
  • 政策と資金調達分野で中央政府,地方当局,民間部門が連携をはかり,その調整はLICの作業部会が行う

この政府の回答に対する図書館界の反応は概して好意的である。LICのエバンス委員長は,国民生活の向上,コミュニティ,産業界への図書館の貢献が認識されたことを喜ばしく思っている。英図書館協会のシモン(Ross Shimmon)事務局長やLASER(ロンドン及び周辺地域の相互協力組織)は,公共図書館ITネットワークの創設に関して,政府,公共図書館,LICへの支援を申し出ている。また,EARL(公共図書館ネットワークコンソーシアム)は,政府の回答を歓迎しつつ,コンテンツの作成については,情報資源を電子化するだけでなく電子情報サービスまで含めるべきこと,利用者のニーズ,サービス基準,優先順位,提供方法,著作権,課金等を検討すべきこと,図書館職員の養成について,ニーズ分析,養成時期,養成期間,内容等を検討すべきことを指摘している。

このように,英国では,公共図書館が情報化時代において担うべき役割の重要さが認識されはじめている。すでに,LICの作業部会は,ネットワーク開発,研修,コンテンツ作成の3つのグループに分かれて,公共図書館ITネットワークの創設を行うことが決定しており,実現へむけて着々と準備が進められている。

長嶋 佐央里(ながしまさおり)

Ref: Department for Culture, Media and Sport. “New library: the people's network”: the Government's response, Cm 3887. Stationery Office, 1998. 12p
Government to negotiate cheap calls. Libr Assoc Re 100 (6) 282, 1998
New Library: the People's Network: the Government's response, the viewpoint of EARL: the Consortium for Public Library Networking. EARL. [http://www.earl.org.uk/information/responses/dcms.html] (last access 1998.8.18)
Our information age. The Library Association. [http://www.la-hq.org.uk/oia.htm] (last access 1998.8.18)