CA1272 – 東京大学情報基盤センターの発足 / 増田晃一

カレントアウェアネス
No.240 1999.08.20


CA1272

東京大学情報基盤センターの発足

今年4月1日,東京大学では大型計算機センター及び教育用計算機センターの全部と附属図書館の電子化,電算化担当部門を統合・再編して,東京大学情報基盤センターが発足した。同センターは,「東京大学に研究,教育等に係る情報化を推進するための実践的調査研究,基盤となる設備等の整備及び提供その他必要な専門的業務を行う全国共同利用施設として,情報基盤センターを置く。」(国立学校設置法施行規則第二十条の四の五)とされており,大学全体の情報の創造・蓄積・発信を活性化し,21世紀の大学の情報化を推進する役割を担っている。また,遠隔講義・会議システムや,情報化社会の進展に対応した電子図書館サービスの提供も始めている。

同センターの組織は,4研究部門からなる研究部,研究部と一体となってサ-ビスを行う4支援部門からなる情報業務部及び事務部の3部から構成されている。

研究部及び情報業務部の4部門とは,

  1. 全国共同利用のスーパーコンピュータ等の運営とともに,計算機技術の動向を見定めたスーパーコンピューティングの将来に備える研究を行っているスーパーコンピューティング部門,
  2. 教育用計算機システムの維持・管理・運営を中心に,学内の情報リテラシーを含む情報関連教育の支援等を行う情報メディア教育部門,
  3. 東京大学における研究・教育の基盤となる学内ネットワーク(東京大学情報ネットワークシステム:UTnet)の構築や運営管理等を行うキャンパスネットワーキング部門,及び,
  4. 東京大学附属図書館の学術情報資源をコンピュータ・ネットワーク資源と結合することで情報化された大学図書館のサービス・組織の先行形態を実現する図書館電子化部門である。

このうち,図書館電子化部門は,電子ジャーナル・文献情報等のデータベースサービスや,貴重研究資料などの電子化による学術情報資源の整備,流通ネットワークの構築による研究成果や学術情報の発信を支援するとともに,それらを活用するための学術情報リテラシー支援を行う。また情報社会の進展に即応した学術情報サービスを構築・展開しうる電子図書館の実現のために,多言語やJIS等の規格以外の文字コード処理,研究教育資料の電子的提供,貴重資料の電子化等の研究を行うとされている。

図書館電子化部門の,このような役割を実現するものとして,次のものが作成されている。

  • 東京大学で所蔵する図書の「目次情報」や「内容情報(要旨・帯・カバーからの情報)」から検索できる新しいデータベースの「ブックコンテンツ」(OPACでは検索できなかった内容から,図書を探すことができる)
  • インターネット上に公開されている膨大な情報の中から,学術情報として信頼できるものを収集し,適合性を高めた,Webサイトのデータベース「インターネット学術情報インデックス」
  • 安藤昌益の主著「自然真営道」の電子版
  • 「ビデオCDインターネット」と呼ばれる新しい規格で制作され,動画や音声の利用やインターネットとのリンクによる情報の提供ができる,新しい形の利用案内である「まるごと図書館」

このように,研究と情報業務の両機能を持ち,信頼性が高く,高機能な情報基盤を実現し,更に,学内に存在する多くの学術研究情報を適切なメディアにより蓄積・保存・公開することで,情報のみならず情報化研究の実証を大学内だけでなく社会に還元してゆくことも期待されている。

増田 晃一(ますだてるかず)

Ref:東京大学情報基盤センター[パンフレット]1999
東京大学情報基盤センター[http://www.itc.u-tokyo.ac.jp/](last access1999. 7.30)
笹川郁夫 東京大学基盤センター「電子図書館部門」の概要(平成11年度大学図書館職員長期研修講義要綱)1999