CA1269 – 館種を超えた米国の共同保存事業 / 鈴木三智子

カレントアウェアネス
No.240 1999.08.20


CA1269

館種を超えた米国の共同保存事業

ニューヨーク近郊のニューヨーク公共図書館,プリンストン大学図書館,コロンビア大学図書館は,ハイテク機能を備えた共同保存書庫を建設すると発表した。この3館は,それぞれ蔵書数1,330万冊,600万冊,700万冊の大規模図書館である。この書庫は,ニュージャージー州のプリンストン大学キャンパス内に設置され,2001年に運営が開始される。第一期は600万冊,最終的には3,000万冊を収蔵できる規模となる予定である。

この取り組みにより,一館では難しい,低コストで確実な資料へのアクセスが可能となる。各館で毎日午後9時迄に受け付けた請求票をシャトルバスで書庫へ運び,翌朝には資料を配送するので,利用者は請求後24時間以内に資料を手にすることができる。資料は,主題や分類ではなくサイズ・形態別に箱詰めされて高さ9mの棚に並べられ,移動クレーンに乗った職員が出納する。書庫内は適切な温湿度に保たれ,空気中の汚染物質が除去されるなど,各館の一般書庫よりも長期保存に適した環境となっている。

保存書庫に移す資料は各館で選択する。基本的には,利用頻度が少ない資料,あるいは媒体変換済みの原資料が収蔵される。また,プリンストン・コロンビア両大学図書館は,収蔵資料の6割を占める雑誌のバックナンバーを共同で電子化する計画を進めており,この事業が両館の電子図書館への取り組みを加速するものと期待されている。

共同保存書庫計画が,利用の減った資料の墓場ではなく,さらなる利用や各図書館の発展的な事業に結びついている。こうした保存政策と館種を超えたパートナーシップのあり方は,日本でも参考となるだろう。

鈴木 三智子(すずきみちこ)

Ref: McC, E. NYPL, Columbia, Princeton cooperate on storage site. Am Libr 30 (5) 16-17, 1999
NYPL, others to build automated storage facility. Advanced Techonology Libraries 28 (5) 1-2, 1999
Computers in Libraries 19 (5) 14, 1999