CA1271 – 日本語のオンライン書誌情報−日本関係情報の現状(10)− / Robert Britt

背景マリアン・グールド・ギャラガー法律図書館(Marian Gould Gallagher Law Library: MGGL)は,米国ワシントン大学の法学部に所属し,特に東アジア地域(中国,台湾,南北朝鮮および日本)の法律関係文献については国内有数のコレクションを所蔵している。これらの資料の選書,目録作成,レファレ…

カレントアウェアネス
No.240 1999.08.20

 

CA1271

日本語のオンライン書誌情報
−日本関係情報の現状 (10)−

背景

マリアン・グールド・ギャラガー法律図書館(Marian Gould Gallagher Law Library: MGGL)は,米国ワシントン大学の法学部に所属し,特に東アジア地域(中国,台湾,南北朝鮮および日本)の法律関係文献については国内有数のコレクションを所蔵している。これらの資料の選書,目録作成,レファレンスを担当しているのは東アジア法律部(East Asian Law Department: EALD)である。

RLIN, III, Marian

学生と研究者のニーズに応えるため,EALDは以下の3つのオンラインシステムを使用している。

1) RLIN(Research Libraries Information Network, CA1219参照)

RLG(Research Libraries Group)が作成している書誌ユーティリティ。MGGLは,RLGの会員として目録データを提供している。日本語および中国語・朝鮮語(CJK)の文字コードは,1980年代に開発されたREACC(RLIN East Asian Character Code)が使用されている。現在,REACCとその応用であるEACC(East Asian Character Code)を使っている図書館は多い。

2) III(Innovative Interfaces Incorporated)

MGGLが使用しているUNIXベースの図書館システムで,資料購入からチェックイン,目録作成,貸出の機能を持つ。また,RLINからデータを取り込み,IIIのフォーマットに変換することができる。ユニコードが使える“Anzio Win”というtelnetプログラムでMGGLのシステムと連動させることにより,Windows95/98及びWindows NTでのCJK言語の表示が可能となる。

3) Marian(詳細は,http://www.iii.com/products/public_services/webopac.shtmlを参照

1999年4月から導入された,WebベースのOPAC。CJK言語の表示は,複数の方法から選べるようになっており,以前よりは容易になったが,技術的な問題がまだ残されている。前述のとおり,米国内ではCJK言語のコードとしてEACCが多く使われている。一方,日本ではJIS, Shift-JIS, EUC,中国ではGB,台湾ではBig5,韓国ではKISと,それぞれの国内では異なるシステムが使用されているため,Web上で文字が化けてしまうのである。しかし,この問題も近い将来解決されるだろう。IIIは現在,ユニコードが使用可能なWebブラウザにより,異なるハード・ソフトウェアでもCJK言語を表示できるシステムを開発中である。Marianの日本語の表示に関する最新情報については,Webサイトの目録のページ(http://marian.law.washington.edu/)を参照されたい。

入力方法

他のCJK言語とは異なり,日本語のOSは文字の入出力機能がサポートされていないため,ディスプレイ上に日本語とその他の文字を表示させるのは,困難な作業である。RLINで使用しているRTFW(RLIN Terminal for Windows)というソフトウェアでは,入力方法が何種類かある。かなキーボードあるいは通常のローマ字キーボードで入力して,あてはまる漢字を一文字ずつ選択していく方法や,漢字の偏が1つずつ割り当てられたキーボードを使い,同じ偏の漢字の中から選んでいく方法もある。時間はかかるが,読みがたくさんある漢字のときは後者が便利である。また,IIIでは,前述のAnzio Winにより,インターネットで表示された日本語のテキストを,そのまま書誌データベースに取り込むことが可能となったので,作業は非常に楽になった。ただ,Anzio WinはMicrosoft IMEとは同時に作動しないため,依然として直接入力はなし得ていない。

システムを利用した日本語の書誌情報作成

3つのシステムを利用した選書から発注,チェックイン,支払い,整理,貸出までの作業の流れは,複雑なものである。選書にあたっては,まずRLINを検索し,他館の所蔵状況を参考にする。発注が決まれば,IIIにより日本語で簡易な書誌レコードを作成する。このとき,RLINにレコードがあればダウンロードし,なければ,タイトルや奥付情報,ISSNなど基本的な書誌事項を自分たちで入力する。この書誌レコードに発注やチェックイン,ID番号などの「付加レコード」を加えていく。発注レコードは,発注の種別,書店名,値段などから構成されており,日本語の情報も入力できるようになっている。書店への連絡も日本語で入力できるので,大変便利である。ID番号レコードは,各資料にバーコードで表示されている。

そして,この発注レコードは日本の書店に送付される。書店は発注情報を日本語で受け取ることができるのである。雑誌の新タイトルが到着すれば,各号がチェックされ,RLIN上にレコードを登録する。RLINのレコードはIIIにもダウンロードされる。最後に,資料はラベルを貼られ納架される。ラベルにはタイトルがローマ字で記載されており,文字が読めなくても資料を特定することができる。貸出に供する資料はMarianから探すことができる。現在はローマ字表示のみだが,すぐにCJK言語でも表示される予定である。

結論と将来の進展

米国ではこの20年間で,ハード・ソフトともCJK言語への対応が急速に進展した。不便さや高額な費用といった難関をこえて,以前には想像もできなかったような機能を利用できるようになったのである。究極の理想は,世界中の研究者や図書館員がRLINやOCLCの書誌レコードをWWWからカット&ペーストし,ワープロや電子メールに他の言語とともに自由に利用できるようになることであろう。ユニコードのような文字コードの国際標準やWWW,多言語Webブラウザの発達で,環境はかなり整ってきている。また,WebベースのOPACの導入が進み,多言語OSが進化していけば,さらなる使いやすさ,作業のしやすさが期待できるだろう。図書館員も含め情報システムの利用者がソフトウェアの製作者と協力し合い,働きかけていくことによって,世界中の文字を簡単に,そして自在に扱える時代がやってくることを願う。

Marian Gould Gallagher Law Library: Robert R. Britt

Ref: Cataloging and Distribution Service, Library of Congress. USMARC character set for Chinese, Japanese, and Korean. 1986