CA1311 – 韓国の学校図書館、改革への多様な試み / 白井京

カレントアウェアネス
No.247 2000.03.20

 

CA1311
韓国の学校図書館,改革への多様な試み

CA1137で報告されたように,韓国における学校図書館は「放置されて」きた。韓国で出版されている『出版ジャーナル』誌では「わが国の学校図書館に本がない」という題でその状況を伝えている(1)。これは同誌が全国の中高等学校の司書教師を対象にアンケート調査した結果であり,蔵書・司書不足の慢性化,生徒の図書館離れを浮き彫りにしている。そのような中で,近年のコンピュータ化の進展による図書館の改革,行政側の教育学術情報院新設(CA1296参照)など,「情報化」をキーワードとする新たな改革が始まっている。また市民団体や企業の協力による学校図書館改革や,司書教師を通常の授業にも参加させる等様々な面からの改革が行われている。

第一の改革としてコンピュータ化,情報化の進展が挙げられる。前掲『出版ジャーナル』誌は「楽しく気楽に本を読む空間」という題名で先端電算システムを備えた仁川市パンムン女子高校図書館の状況を紹介している。学生証と図書にバーコードを付けて貸出返却処理を容易にし,またWeb上でOPACを公開している。このような努力は他にも数件見られ,例えば大邱市のソンファ女子高校は専門司書がいないにもかかわらず,国語教師と数学教師の協力によって図書管理プログラムが作成され,生徒の図書利用を容易にしている(2)。このソフトは近隣地域20数校でも活用されているという。筆者が韓国版ヤフーで検索したところ,インホン高等学校(3)等,学校図書館のコンピュータ化に関する資料紹介や利用案内,本の紹介などについて,ホームページで公開している学校が複数あった。

第二に市民団体や企業の協力がある。中でも多くの媒体で報道されたのがグンポ地域経実連(経済正義市民実践連合)という市民団体の「良い学校図書館作り」運動である(4)。この市民団体は「学校図書館の活性化こそが青少年教育の土台を構築する」とし,非常勤の司書を雇うよう行政側に要請し,学校図書館のコンピュータ化や読書指導を試みたり,初等学校(日本の小学校に該当)において放課後の特別活動の時間に読書指導などを行っている。この市民運動は保護者や地域社会にも広がり,特に地元に工場をもつユハンキムバリー社は図書購入費2千万ウォン(2百万円相当)を寄付したという(5)

第三に司書教師の通常授業への参加の動きである。ソウル市のソンゴク女子高校では家庭科の授業の際,担当教師がグループごとに課題を振り分けた後に,司書教師が課題を解決するためのインターネット,百科事典,定期刊行物等の関連資料探しに関する授業を行った(6)

このように,「放置されて」きた韓国学校図書館も,徐々に様々な側面から改革への試みがなされはじめている。

白井 京(しらいきょう)

注([ ]はハングルであることを示す):
(1)[わが国の学校図書館に本がない][出版ジャーナル](259)2-3,1999
(2)[学校図書館の復活に「特別な熱情」]嶺南日報 1999.11.11[http://www.yeongnam.co.kr/](last access 2000.1.13)
(3)[http://www.kebi.com/~inhun1/](last access 2000.1.13)
(4)[図書館改革運動を繰り広げるグンポ経実連カクト代表]文化日報 1999.11.8[http://www.munhwa.co.kr/](last access 2000.1.13);[良い学校図書館作り運動拡散グンポ経実連全国初試行]仁川日報 1999.10.21 [http://www.inchonnews.co.kr/](last access 2000.1.13)
(5)[ユハンキムバリー,良い学校良い図書館作りを支援]毎日経済新聞 1999.11.18[http://www.maeilbiznews.co.kr/](last access 2000.1.13)
(6)[教科―司書教師,共同授業][ハンギョレ]新聞 1999.11.12 [http://www.hani.co.kr/](last access 2000.1.13)
Ref:次にあげるのは,韓国の学校図書館全般の情報,新聞記事データベースである。[http://daegun.daegun-h.ed.chungnam.kr/sg862/index.htm](last access 2000.1.13)