E878 – 学校図書館振興法,同施行令は施行されたものの…(韓国)

カレントアウェアネス-E

No.142 2009.01.21

 

 E878

学校図書館振興法,同施行令は施行されたものの…(韓国)

 

 2008年の韓国の図書館界のニュースの1つに,学校図書館振興法,同施行令の制定・施行がある。

 学校図書館振興法は,2004年7月に議員から法案が発議されていたものである(CA1578参照)。当時の図書館に関する一般法「図書館および読書振興法」(CA1018参照)の規定だけでは,学校図書館が公教育の充実,地域社会の文化発展,生涯教育の振興といった重要な役割・機能を果たす後押しにならないとして,行政的・財政的支援を強化し,学校図書館の拡充,活用向上を目指す体制を規定しようとしたものである。この法案は「図書館法」「読書文化振興法」(CA1635参照)の制定に遅れることおよそ1年,2007年11月に国会で賛成多数により議決され,同12月に公布,2008年6月に施行された。

 同法は第3条で,学校図書館を振興するために必要な施策,行政的・財政的支援を国と地方自治体の責務と規定するとともに,国の体制として,教育科学技術部長官が5年ごとに学校図書館振興基本計画を策定・施行すること(第7条),同長官所属下に有識者からなる審議会「学校図書館振興委員会」を設置すること(第8条)を,また地方自治体の体制として,教育委員会所属下に「学校図書館発展委員会」を設置すること(第9条),学校に「学校図書館運営委員会」を設置すること(第10条)を定めている。このほか,地方自治体による学校図書館支援費(第11条),司書教師・実技教師(CA1137参照)など専門担当者の配置(第12条),施設・資料の要件(第13条),教育科学技術部による学校図書館協力ネットワークの構築(第14条)などが記載されている。

 このような同法の規定や基準等を具体化したものが,2008年6月に制定・施行された学校図書館振興法施行令である。「学校図書館振興委員会」の運営に関する事項(第3条),「学校図書館発展委員会」の構成・運営に関する事項(第4条)などに加え,司書教師・実技教師など学校図書館専門担当者の配置基準とその業務内容(第7条),施設・資料の基準(第8条)などが定められている。具体的な基準は,学校図書館専門担当者は学生1,500名につき1名を基準とする,学校図書館の面積は100平方メートルを理想とする,資料は1,000タイトル以上とし毎年100タイトル以上追加しなければならない,などとなっている。

 ところが,この内容は「図書館界の要求には至らない水準」であると受け取られている。折りしも,教育科学技術部が公務員の定員凍結方針を発表しており,実際の司書教師の新規配置が厳しい状況にあると目されていることから,韓国学校図書館協議会等は「学校図書館正常化および司書教師配置要求決議大会」を数度にわたり開催し,司書教師の新規配置,読書教育の活性化,非正規の図書館職員の待遇改善などを訴えたデモなどを行っている。

 2009年1月15日付け東亜日報オンライン版によると,ソウル市内の538の国公立小学校のうち,司書教師がいる学校はわずか26か所であり,2009年中の新規配置はゼロだという。小中高合わせても,司書教師配置数はここ数年横ばいであるといい,法,施行令が制定・施行されたものの,実際の学校図書館の充実化への道はまだまだ厳しい。

Ref:
http://likms.assembly.go.kr/bill/jsp/BillDetail.jsp?bill_id=028200
http://likms.assembly.go.kr/law/jsp/Law.jsp?WORK_TYPE=LAW_BON&LAW_ID=B4558&PROM_NO=20824
http://www.hani.co.kr/arti/society/schooling/321135.html
http://www.donga.com/fbin/output?n=200901150139
CA1018
CA1137
CA1311
CA1578
CA1635