CA1296 – 韓国教育学術情報院の新設 / 金容媛

カレントアウェアネス
No.245 2000.01.20


CA1296

韓国教育学術情報院の新設

韓国政府は行政改革の一環として,学術振興法による韓国学術振興財団(Korea Research Foundation: KRF)付設先端学術情報センター(Korea Research Information Center: KRIC)と韓国教育放送院法による韓国教育放送院(Korea Educational Broadcasting System)付設マルチメディア教育支援センター(Korea Multimedia Education Center: KMEC)を廃止し,韓国教育学術情報院(Korea Education and Research Information Service: KERIS)を新設した。韓国教育学術情報院法(1999年1月12日制定)により1999年4月22日に設立されたKERISは,教育の情報化と関連した政策と執行機能をもつ教育部傘下の政府出資機関の法人である。これまで大学および学術情報を担当したKRICと初・中等の教育情報を担当したKMECの両機関を統合し,両機関のすべての財産・権利・義務を韓国教育学術情報院が包括継承した。

KERISの推進事業については,次のように規定されている(同法第6条要約)。教育用コンテンツの開発・普及事業,教育情報化の活性化支援,教育情報総合サービス・システム(EDUNET)の運営・管理,学術情報サービス・システム(RISS)の運営・管理,民間開発教育情報の確保および連係体制の構築,情報技術活用教育の強化,情報教育担当教員の養成及び研修,生涯学習情報の開発・連係・確保体制の構築,教育情報の体系化及び標準化,教育情報化関連の国際教育及び協力事業。

主な活動としては,教育学術情報化の基盤として「教育情報総合サービスシステム(EDUNET)」と「学術情報サービスシステム(RISS)」の運営・管理がある。

「教育情報総合サービス・システム(EDUNET)」は開かれた教育社会,生涯学習社会を実現するための総合的基盤を構築するために,韓国教育放送院の付設機関として1997年3月に設立されKMECが推進してきたものである。教育情報化政策決定支援のための基礎資料を提供し,先端情報技術メディアを利用した教授・学習方法の活性化のために,教育ネットワークを通じて多様な教育情報サービスを実施した。EDUNETは学生と教員,父兄など教育需要者に教育関連情報を提供し,分散している教育関連情報を相互に連係することで教育情報を総合的・体系的にサービスするために構築されたシステムである。

EDUNETは現在Webサービスと文字サービスを提供している。Webサービスには,1)EDUNETサイバー学校,衛星教育放送(小学校,中学校,高等学校),2)教育学習資料室,3)教育研究室,4)教師研修室,5)父兄支援センター,6)サイバー生涯学習院,7)情報交換,8)学習用品の交換市場,などがある。

EDUNET文字サービスには,1)オンライン学校(仮想学校:小・中・高校・大学),2)教育相談,3)衛星教育放送サービス,4)電子メール,5)対話室,6)同好会,7)討論広場,8)教育関連機関・団体の案内,などがある。EDUNETの登録者は1999年10月現在,約130万名,1日の平均アクセス件数はWebサービスが24,000件,文字サービスが174,000件となっている。すべての国民が無料で,インターネット,PC通信で利用できる。

「学術情報サービス・システム(Research Information Service System: RISS)」は研究者に国内外の学術情報を迅速に提供することを目的として,国内学術情報の共有体制および海外の学術情報機関との協力体制を構築するために,韓国学術振興財団の付設機関として1996年12月に設置されたKRICが推進してきたものである。

RISSのサービスは,1)図書総合目録サービス:全国の大学図書館(1999年5月現在145大学)の共同目録作成,総合目録の提供,相互貸借サービス,2)海外学術情報サービス:70種以上の海外データベースおよび電子雑誌の提供,3)学術論文情報サービス:国内学術雑誌論文および韓国人による海外博士論文のデータベース提供(フルテキストを含む),4)学術支援情報サービス:学会及び研究所情報,研究者情報などの提供,となっており,RISSの登録者は1999年10月現在約9万名,1日の平均アクセス件数は2,700件(Web)となっている。

教育学術情報化を推進する機構として新設された韓国教育学術情報院は,従来分散されていた教育情報と学術研究情報の収集と流通体制を統合した。学校教育,生涯学習,学術研究に必要な専門的な情報を総合的に迅速に提供することで,これからの知識情報化社会において必要な新しい教育の形態であるサイバー教育体制と生涯学習体制の実現,また学術研究情報の中枢機関としての役割が期待される。

駿河台大学文化情報学部:金 容媛(きむよんうぉん)

Ref:韓国教育学術情報院法(法律第5686号,1999年1月21日制定)
韓国電算院,国家情報化白書(National Informatization White Paper)1999.802p
韓国教育学術情報院,案内資料,11p.
教育情報総合サービス・システム(EDUNET)案内資料,7p
学術情報サービス・システム(RISS)案内資料,7p
韓国教育学術情報院[http://www.keris.or.kr](last access 1999. 12. 24)
学術情報サービスシステム[http://riss.keris.or.kr](last access 1999. 12. 24)
教育情報総合サービスシステム[http://edunet.kmec.net](last access 1999. 12. 24)