「そのメーリングリストから私を外せ」と繰り返し書かれているだけの論文が受理される

International Journal of Advanced Computer Technology(IJACT)というコンピュータ科学分野のオープンアクセス(OA)雑誌が、“Get me off Your Fucking Mailing List”と題し、本文にも同じ内容が繰り返されているだけの論文を受理したことが、米コロラド大学デンバー校図書館のJeffrey Beall氏のブログで報じられています。Beall氏は著者の支払う論文投稿料(APC)を得ることだけを目的としている、いわゆるハゲタカ出版のリストを公開している人物です。

今回受理された論文は元々は2005年に、雑誌ではなく国際会議への参加を誘うスパムメールに抗議するために作成されたものです。タイトルだけではなく、本文も章立て等はなされているものの、本文は全てタイトルと同じ内容の繰り返しで、見出しも途中から全く同じ文の繰り返しになり、図も全て同じ内容が書かれています。

IJACTから投稿を呼びかけるスパムメールを受け取ったオーストラリアの研究者がメール本文に何も書かず、この論文のファイルのみ添付して返信したところ、IJACT誌から査読の結果、受理した旨の返信があったとのことです。査読者の評価は5段階中最高の”Excellent”でした。IJACT誌からのメールには出版のためには150ドル振り込むよう、書かれていたとのことです。

Bogus Journal Accepts Profanity-Laced Anti-Spam Paper(Scholarly Open Access、2014/11/20付け)
http://scholarlyoa.com/2014/11/20/bogus-journal-accepts-profanity-laced-anti-spam-paper/

“Get Me Off Your Fucking Mailing List” is an actual science paper accepted by a journal(VOX、2014/11/21付け)
http://www.vox.com/2014/11/21/7259207/scientific-paper-scam

スパムへの返信用に作成した「論文」、オープンアクセスジャーナルに採用される(スラッシュドット・ジャパン、2014/11/24付け)
http://it.slashdot.jp/story/14/11/23/2246214/%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%A0%E3%81%B8%E3%81%AE%E8%BF%94%E4%BF%A1%E7%94%A8%E3%81%AB%E4%BD%9C%E6%88%90%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%8C%E8%AB%96%E6%96%87%E3%80%8D%E3%80%81%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%B3%E3%82…

参考:
ハゲタカ出版の雑誌に論文を発表しているのはどんな人?(文献紹介)
Posted 2014年11月11日
http://current.ndl.go.jp/node/27409

ハゲタカ出版がインドの魚類学に与える影響(文献紹介)
Posted 2014年9月30日
http://current.ndl.go.jp/node/27126

SpringerとIEEE、機械生成されたでたらめな論文120本以上をプラットフォームから削除
Posted 2014年2月25日
http://current.ndl.go.jp/node/25553

単なる“金もうけ”の疑いのあるオープンアクセス出版社のリスト(2014年版)
Posted 2014年1月7日
http://current.ndl.go.jp/node/25205

わざと投稿された無意味な論文を受理してしまったOA誌の編集長辞任
Posted 2009年6月16日
http://current.ndl.go.jp/node/13264

CA1829 – 査読をめぐる新たな問題 / 佐藤翔 カレントアウェアネス No.321 2014年9月20日
http://current.ndl.go.jp/ca1829