CA1262 – 図書館に対する援助のあり方 / 佐藤泰幸

カレントアウェアネス
No.239 1999.07.20


CA1262

図書館に対する援助のあり方

過去30年以上もの間,アフリカ各国の政府はもちろん,世界銀行を筆頭に多くの援助機関がアフリカにおける大学教育と国公立大学図書館の振興に尽くしてきた。その結果はどうか。Information Development誌は,2枚の写真を並べている。1枚は雑然と床の上に積まれた不要図書の山。もう1枚は,資料が1冊も排架されていない見渡す限りの空の書棚。これが,ローゼンバーグ(Diana Rosenberg)女史による記事「アフリカの大学図書館への財政支援」の第1頁目である。

70年代以降長く続いた経済不況が原因で,各国政府が計上できる予算や外部援助の額は激減した。しかし,過去に投下された資本はどこへいってしまったのだろうか。ローゼンバーグ女史は,政府予算や外部援助の不足だけが原因ではなく,予算の執行方法や外部援助の方法の非効率性に原因があると見ている。またそれは,国際アフリカ研究所(IAI)が1995年に実施したアフリカの図書館の現状に関する調査の結果を見ても明らかである。

政府予算の支出内訳で特筆すべき点は,図書館予算の総額に対して人件費類の占める割合が高いことである。国公立大学図書館の4分の1が予算の85%以上を人件費関係に充当しており,ある図書館においては,1995/96年度にかかる予算の93%が人件費であった。それ以外にも,例えば多くの国公立大学図書館において,不十分ながら現物支給をも含めて,蔵書の90〜100%を外部援助が賄っている。援助というのは,補填的なものではなく,予算の一部となっているのだ。だが,人件費と資料購入費だけで図書館が運営できるわけではない。業務の機械化しかり,ドキュメント・サプライ・サービスしかり,情報の電子化しかり,ネットワークの構築しかり,新館の建築しかりである。

とはいえ,援助というものは,えてして「援助者が自ら計画して与える」という形を取りがちなものであり,それは,援助を受ける側にとっては主体性の持てない,自由度のない,押しつけがましい,迷惑なものであったりする。また援助は,永続性があるものではない。一定期間が過ぎてしまえば,援助は停止され,予算の裏付けのないプロジェクトは中断してしまう。援助は,図書館側が自ら計画し維持できるものを与えてこなかったのだ。

もちろん,援助者がそう望んだ訳でもあるまい。調査の結果を踏まえてローゼンバーグ女史はこれを,援助者と図書館員との間に効果的な双方向のコミュニケーションがほとんど成立していないことが原因であるとし,図書館員に対して自覚をうながしている。大学図書館員は,情報提供のプロとして自らの存在価値を政府,大学当局および援助機関に対してアピールし,同等の地位で予算および援助のあり方について発言できなければならないのだ。

佐藤 泰幸(さとうやすゆき)

Ref: Rosenberg, Diana. The financing of university libraries in Africa. Inf Dev 14(2) 73-79, 1998