カレントアウェアネス-E
No.99 2007.01.31
E597
復興に向けて−ニューオーリンズ公共図書館長を募集
2007年1月,ニューオーリンズ市と市の公共図書館委員会が,市の全図書館を統括する館長の公募を開始した。
2005年8月のハリケーン「カトリーナ」被災(E369,E396参照)から約1年半。ニューオーリンズでは政府の援助を元に,住宅の再建や被災地の清掃,また堤防の増強や水門の設置といった防災対策が進められており,復旧は着実に進んでいる。比較的被害の少なかった歴史地区「フレンチ・クォーター」などには観光客が戻り,市の名物であるジャズやレストランが活況を呈している。米国図書館協会(ALA)も,2006年の年次大会をニューオーリンズで開催し,雇用と税収という形で復興を支援したところである(E472,E521参照)。
一方で,被害の大きかった新興住宅地区には,まだ大きな傷跡が残っている。2005年7月の人口はおよそ45万5,000人であったが,2006年8月時点では18万7,500人と,大きく減少している。転居を余儀なくされた住民の多くは,元の場所に戻り,住居・生活を再建したいと考えているといい,そのための都市計画が住民参加のもと,進められている。
今回公募された館長の主たる任務も,市の公共図書館の再興である。中央館は被災後の10月に開館したものの,全部で12館あった分館は,まだ5館しか開館できていない。被災前は216人いた職員も,ようやく85人にまで回復したところである。分館再建のほか,リーダーシップの発揮,戦略計画の立案,サービスの優先順位付けとそれに合わせた資源の効率的配分,ニーズを満たす効率的なサービスの提供,市・財団・友の会といった関係者との連携,資金提供と協力を呼びかけるアドヴォカシーなど,新しい館長に課されている課題は多い。
館長の給料は10万ドル(約1,200万円)〜13万ドル(約1,570万円)。応募資格は,図書館学の修士号取得・管理職業務経験5年以上であることのみ。ただし,募集要項に掲げられている「理想の候補者」の資質は高い。企画力,コミュニケーション力,マネジメント力,リーダーシップ,寄付・助成金を獲得するファンドレイジングのスキル,スタッフの育成力,新しい技術に関する知識など,さまざまなスキルが求められている。そして,「大きなことをやってのけたい」という意欲と「ニューオーリンズでしか得られない生活を楽しめる」こと。この2つも,館長には欠かせない資質とされている。
Ref:
http://www.dubberlygarcia.com/NewOrleans_CityLibrarian_Ad.pdf
http://www.dubberlygarcia.com/NewOrleans_CityLibrarian_Brochure.pdf
http://lisnews.org/articles/07/01/12/1523242.shtml
E369
E396
E472
E521