カレントアウェアネス-E
No.81 2006.04.26
E472
米国の図書館界はいま…
米国図書館協会(ALA)は2006年4月3日,年次刊行物としては初めて,米国の図書館の現状を概括する報告書を発表した。2005年末にAmerican Libraries誌が選んだ「10大ニュース」(E439参照)と多くが重なっているが,米国の図書館界が直面している問題を端的に知ることができる。
報告書では,米国の図書館がいかに社会に貢献しているかが繰り返し強調されている。2005年8月のハリケーン「カトリーナ」(E369,E396参照)や後続の「リタ」が襲来した際に,図書館は避難場所,救援物資の集積場,そして安否情報・生活情報の提供施設として十二分に機能した。またALAは,全国から30万ドル(約3,500万円)を越える募金や,サービス提供のためのブックモービルを集めたほか,2006年の年次大会を予定どおりニューオーリンズで開催することをいち早く発表し,雇用と税収を生み出すことによるコミュニティ復興支援を行うとした。また,子どもに見せたくない資料を遠ざける運動(E342参照)に対する抗議や,愛国者法における図書館条項の修正(E462参照)など,読書の自由や利用者のプライバシーを守るための活動も精力的に行った。
その一方で,予算の削減による図書館の閉鎖危機(E370参照),図書館員および司書養成課程教員の高齢化(CA1583参照),雑誌などの集合的著作物を遡及してデジタル化する際に著作権許諾を必要とするか否かに関する法廷論争,学校図書館・司書を教室・教員として位置づけるか否かに関する論争など,課題の多い状況も紹介している。
報告書は最後に,Googleの時代においても米国の図書館・図書館員は時代遅れの存在ではなく,コミュニティセンター,また情報提供者や情報アドバイザーとして,欠くことのできない役割を果たし続けていく,と締めくくっている。
Ref:
http://www.ala.org/ala/pressreleases2006/march2006/stateoflibraries.htm
http://www.libraryjournal.com/article/CA6322516.html
E342
E369
E370
E396
E439
E462
CA1583