E598 – そのサービスの金銭的価値は?英国JISCのVFMレポート

カレントアウェアネス-E

No.99 2007.01.31

 

 E598

そのサービスの金銭的価値は?英国JISCのVFMレポート

 

 予算1ポンドあたり,9ポンドに相当するサービスを産み出している−英国情報システム合同委員会(Joint Information Systems Committee: JISC)が2007年1月に発表した自己評価報告書“JISC’s value to UK education and research”に示されている1つの数値である。同報告書は,JISCのサービスが「費用に見合った価値」(Value for Money: VFM)を達成しているかどうかを説明する資料である。サービスに要した費用とそれが産み出した便益を数値化して比較し,そのサービスの経済性・効率性・有効性を説明している。

 JISCは,高等・継続教育機関に対し,情報通信技術を活用する基盤を提供するとともに,豊富な電子コンテンツの提供や,必要な指導・助言の提供を行っており,そのサービスは多岐にわたっている(CA1620 参照)。ネットワークの費用やコンサルタント料など,国内の商用サービスの価格や他国の同様のサービスと比較可能なものもあるが,多くのサービスのVFMは,客観的説明が難しい。しかしJISCは,サービスの品質,資源利用,合目的性,適時性,利便性等を複合的に考慮して価値を金額化することにより,説得力のある説明を提示している。

 例えば電子コンテンツの提供サービスの価値については,JISCの22の情報資源を分析し,教育コミュニティが節約できた金額を算出している。これらの情報資源の構築に要する年間費用は約100万ポンドであるが,価値としては実に26倍,2,600万ポンドを超えるサービスを提供している,としている。

 また,電子コンテンツを使用することによって節約される時間についても,紙媒体・相互貸借・来館等と比較して分析している。大学で教育や研究に携わっているスタッフの情報収集に要する時間の節約分は合計140万人日分になり,平均賃金でその金額を算出すると,1億5,600万ポンドもの費用を節約したことになるという。

 もちろん,サービスの価値のすべてを数値化することには限界はあるが,この報告書は,先駆的な知識情報基盤を提供する組織へと発展を遂げているJISCの“隠れた”価値を数値化してみせている。

Ref:
http://www.jisc.ac.uk/valueformoney
CA1620