E599 – 米国図書館員はダイバーシティに欠けている?

カレントアウェアネス-E

No.99 2007.01.31

 

 E599

米国図書館員はダイバーシティに欠けている?

 

 「メガネ・お団子髪・ミドルエイジ・女性」という典型的な図書館職員像が米国では存在しているといわれており,メガネをかけたミドルエイジの白人女性をモデルにした“Librarian Action Figure”も販売されている。実際,1990年と2000年に行った図書館職員の全数調査をもとに,米国図書館協会(ALA)が性別・人種・年齢などの属性を分析した調査“diversity counts”によると,図書館に勤務する有資格者は,45〜54歳の白人女性が多数を占める。一方で全人口の約14%,約12%を占めているヒスパニック系,アフリカ系米国人の図書館に勤務する有資格者の割合はそれぞれ3.2%,8%に過ぎず,特にアフリカ系米国人の有資格者の図書館職員には減少傾向がみられるという。

 このような中,AP通信社は図書館情報学修士課程で学ぶアフリカ系・ヒスパニック系米国人を取材し,2007年1月7日付け記事で伝えている。

 アフリカ系米国人の図書館司書が少ない理由として,伝統的にアフリカ系米国人が多く通う大学の中で,ALAが認定する図書館情報学大学院がわずか1校しかないことが指摘されている。米国では大学院進学がその後の職業に大きな影響を与えるが,専門職大学院が身近に存在しない学生が,職業選択の選択肢として図書館を選ばないのは当然のことであろう。記事に登場する大学図書館司書を目指すアフリカ系米国人の女性は,ALAの奨学金“Spectrum”の支給を受けて,アラバマ州立大学の図書館情報学修士課程で学んでいる。“Spectrum”はマイノリティの図書館職員数を実際の人口比と同程度まで拡大し,図書館職員の人種的多様性をもたらそうとするALAの取り組みの一つで,ALAが認定する図書館情報学修士課程で学ぶマイノリティの学生に対し支給される奨学金である。

 同じく大学図書館司書を目指すヒスパニック系の女性は,博物館・図書館サービス機構(IMLS)の奨学金を受けて図書館情報学修士課程を取得したという。彼女は異なる文化的な背景をもつマイノリティの存在は,異なる観点を利用者に提供できるのではないか,と語っている。

 価値観の多様性(diversity)の尊重を追求する米国。図書館職員の人種構成を,利用者である米国市民の構成に合わせて多様性を確保していくことは,米国図書館界に課せられた課題となっている。

Ref:
http://www.mcphee.com/laf/
http://www.ala.org/Template.cfm?Section=diversity
http://www.ala.org/ala/diversity/spectrum/spectrum.htm
http://www.ala.org/ala/ors/diversitycounts/DiversityCounts_rev07.pdf
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/01/05/AR2007010502187_pf.html
http://www.imls.gov/