カレントアウェアネス-E
No.99 2007.01.31
E600
LCの職員組合,LCのビジョンや政策を批判 <文献紹介>
Mann, T. What is going on at the Library of Congress?. 2006. (online), available from http://guild2910.org/AFSCMEWhatIsGoingOn.pdf (accessed 2007-01-30).
米国議会図書館(LC)と,LCに勤務する1,600名以上の専門職員が加入している組合“Library of Congress Professional Guild”の対立が表面化している。人員削減や勤務時間中の組合活動に関する論争といった他の労使関係にも見られる対立もあるものの,主に注目を集めているのは,LCのビジョンや政策に対する組合からの批判である。組合のウェブサイトには,目録政策の将来に関する論考を集めた特設ページ“The Future of Cataloging”があるが,本文書はその中核をなすものである。
CA1617で紹介しているとおり,LCの委託によりコーネル大学図書館のカルホーン(Karen Calhoun)が作成した「カルホーン報告書」(Calhoun Report)に対しては,組合側のマン(Thomas Mann)が批判を展開している。さらにマンは,LCのビジョンや政策における目録業務の位置付けについて批判する本文書を2006年6月に公開した。この中でマンは,LCが最近行った悪しき決定として,(1)カルホーン報告書の作成,(2)シリーズ典拠レコード・シリーズタイトルコントロールの廃止,(3)従来は紙媒体やマイクロフィルムで受け入れていたEmerald社の出版物や博士論文を(原資料がデジタル形態でないのに)デジタル媒体でのみ受け入れるとしたこと,(4)著作権局の目録の廃止,(5)著作権の制限がない特別コレクションのデジタル化を目録業務より優先するビジョンを掲げたこと,の5点を挙げ,それらを仔細に論証している。
マンの批判の槍玉に挙がっているのは,主にLCの図書館サービス担当副館長・マーカム(Deanna Marcum)である。マンによれば,マーカムをはじめとするLCの上層部が,「“Google Book Search”などの企業による図書館蔵書のデジタル化が進むことにより,何百万もの資料に対し簡単で正確な検索ができるようになると,LCは特別コレクションのデジタル化に注力するくらいしかやることがなくなる」といった認識に立っているとする。そして,マーカムらの議論は「図書館に行くことなくインターネットで何もかもを済ませようとする怠け者の学生」のような利用者を前提としており,そのために,Googleのような「関連性」,Amazonのような「フォークソノミー」(E595参照)で検索結果の妥当性を判断することで十分だと結論付けていると批判する。マンは,実際のLCの利用者は研究者や図書館員であり,LCの件名標目による検索,LC分類表に基づき主題別に排架された書架のブラウジングは,研究図書館にとって不可欠なものだとする。そして,Googleの時代において,図書館がなすべきことは,Googleに追従するのではなく代替(alternative)として機能することだとし,目録業務の重要性を説いている。
2006年7月に行われたLCのWorld Digital Library構想(E416参照)に関する下院の公聴会においても,組合はマンの見解に基づき,同構想に懸念を示す意見表明を行っている。また2007年1月には,マンによる続編“More on What is Going on at the Library of Congress?”のほか,シリーズ典拠レコードに関する批判文書が公開され,図書館界からのさらなる注目を集めている。
Ref:
http://www.guild2910.org/
http://www.guild2910.org/future.htm
http://www.libraryjournal.com/article/CA6357471.html
http://www.guild2910.org/LC%20Guild%20World%20Digital%20Library%2027%20July%202006.pdf
http://www.guild2910.org/AFSCMEMoreOnWhatIsGoing.pdf
http://www.guild2910.org/SARS%20PAPER.pdf
CA1617
E595
E416