カレントアウェアネス-E
No.499 2025.04.17
E2779
みなサーチ、公開から1年を振り返る
国立国会図書館関西館図書館協力課・本田麻衣子(ほんだまいこ)
2024年9月、「みなサーチ(国立国会図書館障害者用資料検索)とデータ提供館並びにデータ制作者の方々」が、障害の当事者・支援者らの参画による障害者用資料検索を実現したとして、「Library of the Year 2024ライブラリアンシップ賞」を受賞した。
「みなサーチ」は、正式名称を「国立国会図書館障害者用資料検索」といい、国立国会図書館(NDL)が提供する障害者用資料検索サービスである。2023年3月にβ版を試験公開し(E2608参照)、障害当事者等からのフィードバックを受けて改善を重ね、2024年1月に正式版を公開した。みなサーチという愛称には、すべての人にとって使いやすく、検索しやすいシステムでありたいというNDLの願いが込められている。本稿では、みなサーチの概要と公開から1年の歩みを数値で振り返るとともに、今後の展望についても述べたい。
●みなサーチの概要
みなサーチは、目の見えない・見えにくい、文字が読みづらい、紙の本を持つことやページをめくることが困難である、読書姿勢を保つのが難しいなど、様々な障害のある人が、自分にとって利用しやすい形式の資料を探すことができるサービスである。
みなサーチは10種類のデータベースと連携しているため、NDLが所蔵する障害者用資料だけでなく、他の図書館で製作・所蔵している資料、みなサーチ以外のウェブサイトで提供されている資料、市販の音声読み上げ対応の電子書籍やオーディオブックなども、まとめて検索することができる。また、点字資料やDAISY資料だけでなく、テキストデータやバリアフリー映像資料、LLブックなど24種類の資料形態を指定して、ニーズにあった形式の資料に絞って検索できることも特徴である。
さらに、みなサーチで検索できる資料の中には、直接みなサーチから本文のデータをダウンロードし、パソコンやスマートフォンで利用できるものも含まれる。これらの資料は、NDLが2014年から提供している「視覚障害者等用データ送信サービス」のデータであり、みなサーチはこのサービスを利用するための入口ともなっている。
●利用者数の推移
前述の視覚障害者等用データ送信サービスを利用できるのは、NDLに利用者登録した視覚障害者等の個人及び機関(送信承認館)である。みなサーチの公開が、視覚障害者等用データ送信サービスの個人の登録者数および送信承認館数に与えた影響を見てみたい。
まず、個人の登録者数は、2014年1月のサービス開始から2023年3月末までの約9年間で551人(年平均約61人)であったが、みなサーチβ版そして正式版が公開されたことにより、2023年4月から2024年12月末までの登録者数は、わずか2年弱で363人と顕著な増加がみられる。
同様の傾向は送信承認館数にも見られる。2014年1月から2023年3月末までに登録した送信承認館数は239館(年平均約27館)であったのに対し、2023年4月から2024年12月末までの送信承認館数は134館と、2年弱で100館以上増加している。
みなサーチの公開および認知度向上と相まって、視覚障害者等用データ送信サービスの利用が拡大しているといえよう。
●アクセス数の推移
次に、みなサーチから利用できる視覚障害者等用データが、実際にどの程度利用されているのかをみてみたい。みなサーチ公開前の視覚障害者等用データへのアクセス数は、月平均約5万4,000件であったが、β版そして正式版が公開されて以降のアクセス数は、月平均約7万2,000件と急増している。
アクセスが増えた理由の一つとして、みなサーチでは、従来と比較して利用可能なデータが大幅に増加したということが挙げられる。これは、デジタル化資料の全文テキストデータ約247万点の提供を開始したためである。全文テキストデータとは、NDLの所蔵資料をデジタル化した画像データから、光学的文字認識(OCR)処理により作成したテキストデータである。全文テキストデータにより、視覚障害者等は、音声読み上げソフトを使ってデジタル化資料の内容を読み上げて確認したり、本文を点字で表示したりすることが可能となった。現在提供している全文テキストデータは300万点以上に上り、テキスト化の進捗に合わせて、今後も順次提供件数を増やしていく予定である。
このように、みなサーチにおいて膨大な数の全文テキストデータを提供することにより、様々な資料に対する視覚障害者等の潜在的なニーズが顕在化したことも、視覚障害者等用データへのアクセス数が増加した一因といえよう。
●今後の展望
みなサーチは公開して終わりではない。引き続き利用者の声を反映させ、使い勝手の向上に向けた継続的な改善を重ね、より良いサービスへと進化させていくことを目指している。
例えば、児童生徒や学生が、自分のニーズや特性に合わせて学びに必要な資料にアクセスできるように、学校図書館や大学図書館に対してみなサーチの利用方法等に関する広報を強化し、みなサーチの利用が広がることで、学校や大学でアクセシブルな資料へのアクセスがより円滑になり、読書バリアフリーの環境整備が進むことが期待される。
みなサーチの検索機能は、登録なしで誰でも利用できる。ぜひ一度、検索を試してみてほしい。みなサーチが、さまざまな人々にとって読書を楽しむきっかけとなることを願っている。
Ref:
“「みなサーチ(国立国会図書館障害者用資料検索)とデータ提供館並びにデータ制作者の方々」がLibrary of the Year 2024ライブラリアンシップ賞を受賞しました”. NDL. 2024-10-15.
https://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2024/241015_01.html
みなサーチ.
https://mina.ndl.go.jp/
“視覚障害者等用データ送信サービス(視覚障害者等個人の方向けのご案内)”. NDL.
https://www.ndl.go.jp/jp/support/send.html
“視覚障害者等用データ送信サービス(図書館等向け案内)”. NDL.
https://www.ndl.go.jp/jp/library/supportvisual/supportvisual-10_02.html
“読書バリアフリーの推進に向けて、みなサーチ正式版を公開しました”. NDL. 2024-01-05.
https://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2023/240105_02.html
みなサーチ正式版を公開しました. 国立国会図書館月報. 2024, (758), p. 8-18.
https://doi.org/10.11501/13610008
杉田正幸. 国立国会図書館障害者用資料検索「みなサーチ」β版の紹介. カレントアウェアネス-E. 2023, (459), E2608.
https://current.ndl.go.jp/e2608