E2780 – 米国の10代の情報意識・習慣・スキルに関する調査

カレントアウェアネス-E

No.499 2025.04.17

 

 E2780

米国の10代の情報意識・習慣・スキルに関する調査

国立国会図書館利用者サービス部図書館資料整備課・外村廉(とのむられん)

 

  2024年10月、ニュースリテラシー教育に取り組む米国の非営利組織であるNews Literacy Project(NLP)が、米国の10代の若者の情報意識・習慣・スキルに関する調査報告書“News Literacy in America: A survey of teen information attitudes, habits and skills (2024)”を公開した。NLPのウェブサイトによると、ニュースリテラシーとは、ニュースやそのほかの情報の信頼性を評価し、何を信頼し、共有し、どのように行動すべきかを判断するために、事実に基づいたジャーナリズムの基準を認識する能力と定義されており、本報告書においては、メディアリテラシー教育の基礎的要素であるとしている。本稿では、本報告書の概要を紹介し、日本のニュースリテラシー教育の動向に触れる。

●調査結果と提言

  調査は、2024年5月17日から28日まで、13歳から18歳の1,110人を対象として、オンラインで実施された。

  主な調査結果として、次の八つが挙げられている。

  1. 回答者の94%は、学校がメディアリテラシー教育を実施することを望んでいる。一方、2023年度から2024年度の間に少なくとも一回はそうした指導を受けたことがあると回答したのは39%に過ぎなかった。
  2. ニュース、広告といった情報の種類を区別する設問において、三問全て正解できた人は18%だった。
  3. ジャーナリストや報道機関は民主主義を守るものであると考えている人は55%、民主主義を守るよりも害していると考えている人は45%だった。またニュースメディアに対する信頼度が低い人の間では、民主主義を害していると回答した割合が73%に上った。
  4. 近年の米国の報道機関数の急激な減少に関して、関心があまりない、または全くないと回答した人は67%だった。
  5. 報道機関をかなり信頼している、またはある程度信頼していると回答した人は64%だったが、80%の人が、報道組織の制作した情報はそのほかのクリエイターによるコンテンツと同程度、あるいはより偏っていると考えている。
  6. ソーシャルメディアで陰謀論を広める投稿を毎日見かけると回答した人は20%、毎週見かけると回答した人は31%であった。また、陰謀論を広める投稿を目にしていると回答した人の81%は、そうした陰謀論を信じる傾向にある。
  7. 生成AIチャットボットを週一回以上使う人は23%であり、チャットボットによって作られた情報をあまり信用できない、あるいはまったく信用できないと回答した人は50%だった。
  8. 情報を得るためにニュースを積極的に探す人は15%であり、ジャーナリストや報道機関が制作したニュースを毎日見ていると回答したのは12%、毎週見ていると回答したのは29%であった。ニュースの入手先はソーシャルメディアが83%、テレビが45%であった。

  また、政策立案者、教育者、ジャーナリスト等に向けた提言として以下の六つが挙げられている。

  1. 州レベルでのメディアリテラシー教育が確実に推進されるよう支援すること。
  2. ニュースリテラシーの基本、特に情報の種類の判断に時間を割くこと。
  3. 民主主義において自由な報道が果たす役割への理解を育むこと。
  4. 一定水準のジャーナリズムは信頼できる情報を生み出しているという理解を促すこと。
  5. 陰謀論や誤情報への対策を整備し、強化すること。
  6. 一定水準のニュースに積極的に接し続けることは、個人として、市民として有益であることを生徒たちに教えること。

●日本のニュースリテラシー教育の動向

  現下、ニュースリテラシー教育の重要性は認められつつある。日本でも、NLPの日本公式パートナーである読売新聞教育ネットワークのウェブサイトで公開された、読売新聞社と電通総研が小学校4年生から中学校3年生の児童生徒を対象に実施した調査によると、日常的にSNSを通じてニュースに接している児童生徒は全体の56.3%に上り、47.0%は誰が情報を発したか、情報源を確かめていないことが明らかになっている。一方で、総務省が高校1年生の生徒を対象に実施した調査では、フェイクニュースについては45.2%、ファクトチェックについては14.9%、生成AIについては14.4%が学校で教えられたことがあると回答している。

  事実でない情報に基づいたニュースが、真偽を問われることなく、インターネットを介して流通する時代を迎えている中、図書館は信頼できる情報を提供する役割を期待されてもいる。ニュースリテラシー教育の普及はまだ途上にあるが、報道に関する人々の認識や行動の実態を明らかにし、具体的な提言を行った本報告書は示唆に富んでいると思われる。

Ref:
News Literacy in America: A survey of teen information attitudes, habits and skills (2024). News Literacy Project. 2024, 101p.
https://newslit.org/wp-content/uploads/2024/10/NLP-Teen-Survey-Report-2024.pdf
News Literacy Project.
https://newslit.org/
“中3の75%「SNSでニュース知る」──読売・電通総研共同調査”. 読売新聞教育ネットワーク. 2022-02-03.
https://kyoiku.yomiuri.co.jp/newsliteracy/articles/contents/nle.php
総務省情報流通行政局情報流通振興課情報流通適正化推進室. 2023年度青少年のインターネット・リテラシー指標等に係る調査結果. 2024, 26p.
https://www.soumu.go.jp/main_content/000950763.pdf