カレントアウェアネス-E
No.98 2007.01.17
E588
FictionFinder:巨大総合目録WorldCatをFRBR化する試み
米国のOCLCが構築・運用するWorldCatは,世界中の10,000館以上の図書館の目録データを取り込み,所蔵資料10億点分,7,600万件以上の書誌レコードを有する巨大なデータベースである。この巨大な総合目録を,FRBR(『書誌レコードの機能要件』; CA1480参照)に準拠させる壮大なプロジェクトが進められている。この変換は“FRBR化”(FRBRization)と呼ばれ, OCLCはその実現可能性や実現に伴う課題の検証を行っている。具体的には,既存の膨大な書誌データを機械的に変換させるためのアルゴリズムの研究や,プロトタイプシステムの開発などの複数の研究を並行的に進めている。
このプロトタイプシステム『FictionFinder』のベータ版が,2006年12月に公開された。このシステムでは,WorldCatから抽出された小説の書誌レコードを,“FRBR風”(FRBResque)に検索・表示することができる。
検索対象は,FRBRの著作(Work)レベルのデータ,約280万件である。これはヒッキー(Thomas B. Hickey)らが, WorldCatに登録された書誌レコードを機械的にFRBR化し,著作単位で束ねたものである。このデータセットを用い, FictionFinderでは,FRBRモデルの階層構造に従い,同一の著作に属する体現形(Manifestation),さらに,最終的には各館の所蔵する個別資料(Item)にたどり着けるようになっている。また,複数のデータが著作単位で束ねられたことで,所蔵機関数によるランキング表示や,相互補完された登場人物,ジャンル,作品の設定などの記述要素を活用した検索やブラウジングのインターフェースも提供している。
さらに,主題によるブラウジングには,LCSHを単純化したFAST(Faceted Application of Subject Terminology)での件名表現や,館種別の所蔵館数から算出した対象読者(Audience)レベルの表示など,同時並行で進められてきたOCLCの他のFRBR関連の研究成果を取り込んだものとなっている。これらにより,総じて,FictionFiderはFRBR化による効果をある程度顕示することに成功したといえよう。
FRBRが1998年に国際図書館連盟(IFLA)により勧告されて以来,OCLCは着実に研究を積み重ねている。今後,WorldCatのような巨大な書誌データベースでのFRBR化の実現方法と課題が整理され,他の総合目録あるいは各機関の目録データベースの機能性向上にフィードバックされていくことが期待される。
Ref:
http://fictionfinder.oclc.org/
http://www.worldcat.org/
http://www.oclc.org/research/projects/frbr/fictionfinder.htm
http://www.oclc.org/research/projects/frbr/default.htm
http://www.oclc.org/research/presentations/vizine-goetz/webwise2006.ppt
http://orweblog.oclc.org/archives/001225.html
http://www.oclc.org/research/projects/fast/default.htm
http://www.oclc.org/research/researchworks/audience/default.htm
CA1480