2023年4月20日、PEN Americaが、米国の学校における禁書に関するレポート“Banned in the USA: State Laws Supercharge Book Suppression in Schools”を公開しました。
レポートでは、2022年の7月から12月について調査されており、この期間は全米の教室や学校図書館における禁書と検閲の深刻化によって特徴づけられてきたとしています。また、公立学校において資料を検閲する新しい州法の影響も見られたとしています。
主な調査結果として、以下などが挙げられています。
・1,477件の禁書事例があり、874タイトルが影響を受けており、2022年前半と比べて増加している。
・テキサス州、フロリダ州、ミズーリ州、ユタ州、サウスカロライナ州における禁書件数が最も多くなっている。
・有色人種やLGBTQ+の人々による物語を対象とした禁書が圧倒的に多い状態が続いている。
・禁書運動の影響は数え切れないほど大きく、「大規模禁書」(“wholesale bans” )によって教室や学校図書館で膨大な数の本へのアクセスが制限されている。
なお、2022年の世論調査では保護者の70%が禁書に反対していることが判明しており、禁書の動きは検閲を要求する少数派によるものであるものの、公立学区は窮地に立たされているとしています。
Banned in the USA: State Laws Supercharge Book Suppression in Schools(PEN America, 2023/4/20)
https://pen.org/report/banned-in-the-usa-state-laws-supercharge-book-suppression-in-schools/
NEW REPORT: 28% RISE IN SCHOOL BOOK BANS OVER FIRST HALF OF 2022-23 SCHOOL YEAR(PEN America, 2023/4/20)
https://pen.org/press-release/new-report-28-rise-in-school-book-bans-over-first-half-of-2022-23-school-year/
関連:
PEN AMERICA INDEX OF SCHOOL BOOK BANS – FALL 2022(PEN America)
https://pen.org/index-of-school-book-bans-2022/
参考:
米国図書館協会(ALA)、2022年の検閲に関するデータを公表:検閲の要求は2021年の2倍近くに上る1,269件でALAの集計開始以来最多 [2023年04月03日]
https://current.ndl.go.jp/car/179754
生徒は新しい本が欲しいのに、制約のために図書館員は購入することができない(記事紹介) [2023年02月03日]
https://current.ndl.go.jp/car/171940
かつては聖域だった学校図書館、今は戦場に(記事紹介) [2022年11月02日]
https://current.ndl.go.jp/car/47102
米国図書館協会(ALA)、2022年の禁書に関する暫定データを公開:2022年の禁書の申し立て件数は2021年を上回る見通し [2022年09月22日]
https://current.ndl.go.jp/car/46873
米・ユタ州、地域の教育機関向けに学校図書館の図書に関する法律の概要を説明する覚書を発表 [2022年05月18日]
https://current.ndl.go.jp/car/46145
PEN America、米国の学校における禁書に関する調査レポートとリストを公開 [2022年04月18日]
https://current.ndl.go.jp/car/46003
米国の学校図書館で静かに本が撤去されている(記事紹介) [2022年04月05日]
https://current.ndl.go.jp/car/45936
CA2029 – 米国の図書館における検閲に関する動向 / 小南理恵
カレントアウェアネス No.354 2022年12月20日
https://current.ndl.go.jp/ca2029