カレントアウェアネス
No.224 1998.04.20
CA1183
ベルリン国立図書館の将来計画
1992年1月,旧東西ドイツのナショナルライブラリーの役割を担っていた旧東ベルリンのドイツ図書館(Deutsche Staatsbibliothek)と旧西ベルリンのプロイセン文化財団国立図書館(Staatsbibliothek Preussischer Kulturbesitz)が統合され,プロイセン文化財団ベルリン国立図書館(Staatsbibliothek zu Berlin Preussischer Kulturbesitz)が誕生した。
しかし,旧東西ドイツの再統一から同図書館の統合までの期間が短く,統合後の図書館運営に関する検討時間も限られていたことなどから,残された問題も少なくない。例えば,同図書館は現在のところ相互に1.8kmほど離れた旧ドイツ図書館と旧プロイセン文化財団国立図書館の2館から構成されているが,今後もこのような2館体制が維持されるのかという点も最終的な結論を見ていない。これは,将来的な資料配置計画などとも密接に関連するだけに,大きな問題となっている。
このような状況を背景に,連邦内務省の委託を受けた図書館専門家による委員会が同図書館の将来計画に関する検討を行っていたが,1997年10月に報告書を発表した。
この報告書では同図書館の役割、蔵書、組織・人員や書庫の収容能力など広範に渡って検討が加えられており、2館体制に関しては次のような意見が示されている。○現状の2館体制を維持し、両館に異なった役割を分担させ、○旧ドイツ図書館には、新聞、音楽や児童・青少年向けの資料などの専門的資料を所管する諸部門を置くとともに、ドイツ近代史を中心とする、研究者向けの歴史資料部門を設置し、一方、○旧プロイセン文化財団国立図書館はその他一般の利用者を対象とするとともに、図書館業務に関する総合的なサービスを行う施設とする。
さらに、○プロイセン文化財団からの分離・独立法人化をも視野に入れ、ナショナル・ライブラリーの機能を担わせる、○従来はドイツ図書館研究所(DBI)が担ってきた、図書館業務に関連する情報テクノロジーの研究・開発機能を担わせる、○統合に伴う業務や目録の遡及入力の終了後には、定員を750人(1997年度874人)以下に削減する、ことなどが提言されている。
なお,同図書館の将来の在り方に関しては,今回の報告書で行われている提言は最終的な拘束力を持つものではない。今後も,このような提言を参考にしつつ,議論が行われる予定である。
鈴木 昭博(すずきあきひろ)
Ref: Jammers, Antonius. Die Staatsbibliothek zu Berlin in schwierigen Zeiten. Bibliothekswes Bibliogr 44 (3) 281-301, 1997
Berliner Morgenpost (http://www.berliner-morgenpost.de) 1997.10.29;1997.11.12
Frankfurter Allgemeine 1997. 11. 8
Mitteilungen Staatsbibliothek zu Berlin Preuischer Kulturbesitz. N.F.6, Soderheft, 1997. 116p