カレントアウェアネス
No.224 1998.04.20
CA1184
フィルム・コレクションのための防衛基地
核攻撃時に政府の高官を収容するための高度に安全な避難所として,1960年代にその生を受けたバージニア州カルペパーの地下壕が,LCのフィルム・コレクションのための中央保存庫として新たな生を始めることになった。
一時はその壕は,財務省証券・印刷局が何らかの災害で被害を受けた時のための金や合衆国通貨を備蓄しておくためにも利用され,より最近には,リッチモンド連邦準備銀行の管轄下でバックアップ用の情報処理施設となっていた。焼却炉や整備工場まで備え,自給自足できるように設計されたその施設も,冷戦の終焉とソビエト連邦の崩壊によって核の脅威がほとんど消え失せて以来,無用の長物となっていた。一方LCでは,フィルム・コレクションを分散保管していた施設のうちの一つがほどなく取り壊されるところであり,他の場所を必要としていた。昨年11月に議会によって同施設のLCへの移管が承認され,かくしてほとんど偶然から,これまで分散していたコレクションを一つに統合する中央保存庫が誕生することになった。
LCが所蔵するコレクションの中には,第二次大戦中に押収または購入された枢軸国のフィルムや,古いところでは1914年のものもある数千の商業映画が含まれている。コレクションを一カ所に集めておくことで,輸送による損傷を防ぎ,適切な環境の下で保存することができるだろう。LCは,ゆくゆくはカルペパーに約75人の職員を配置し,光ファイバーを通して,ワシントンの本館でフィルムを一般に公開することを予定している。
鈴木 弘太(すずきこうた)
Ref: The Washington Post 1997. 11. 16