CA1185 – 図書館長からGPO文書監督官に / 松井一子

カレントアウェアネス
No.224 1998.04.20


CA1185

図書館長からGPO文書監督官に

1997年12月,アメリカの政府印刷局(Government Printing Office: GPO)の文書監督官(Superintendent of Documents: SuDocs)に,図書館界から初めて人材が登用された。文書監督官はGPOの副局長補の1人で,政府刊行物の配布や対図書館サービスを担当するポストである。

新監督官のバックリー(Francis J. Buckley Jr.)氏は,デトロイト公共図書館で27年間勤務した後,1994年からオハイオ州のシェーカー・ハイツ公共図書館で館長を務めていた。文書管理の豊富な経験に加え,合衆国法典第44編(政府出版物および文書に関する編)の改訂に携わったほどの法律の専門知識を持った人物である。

現在GPOは,予算削減や民間業者から廃止を求める声があがるなど,非常に厳しい状況にあり(CA1044参照),公衆への政府情報普及計画を強調して存在をアピールしようとしている。「アクセス促進を最優先目標として強く打ち出していく」とバックリー氏は語る。

そして,もう1つの目標として「販売計画を“蔵書構築方針”という観点から見直す」ということを挙げている。図書館業務経験者として,単に経済的な観点から考えるのではなく,何が必要な情報かということを考慮する必要性を主張するものであろう。

また,GPOでは政府情報を電子化していく方向にあるが,そのことについてはこう語っている。「それぞれの資料にはふさわしい媒体がある。電子化すれば全ての資料が使いやすくなるとは限らない。媒体変換と普及させることとのバランスを取っていく必要がある。」

来期の議会では,情報普及を推進していく上で,文書監督官と他省庁との連携を強化する可能性が討論される予定である。行政内に独立した印刷庁を置き,GPOに政府刊行物を集中させないという案や,GPOと文書監督官の業務を切り離すという案も出てきているという。バックリー氏が加わり,今後のGPOの活動がどのように展開されていくのか,非常に興味深いところである。

松井 一子(まついかずこ)

Ref: Librarian Francis Buckley named Superintendent of Documents. Am Libr 28 (11) 11-12, 1997
田辺由太郎 米国政府刊行物印刷普及の歴史的発展 びぶろす38(3)49-59; 38(7)155-164; 38(11)259-270, 1987