CA1336 – ドイツ図書館研究所(DBI)の閉鎖とその後 / 三浦太郎

カレントアウェアネス
No.251 2000.07.20


CA1336

ドイツ図書館研究所(DBI)の閉鎖とその後

2000年1月1日,「ドイツ図書館研究所(Deutsches Bibliotheksinstitut: DBI)法」が失効し,DBIは「旧DBI(Ehemariges DBI: EDBI)」へと改組された。1978年に西ベルリンに設立されたDBIは,連邦政府と州政府から7対3の割合で予算措置を受け,分散的な図書館制度における調整機関として機能してきた。図書館協力に必要な総合目録の管理や,文献提供プロジェクトの実施,蔵書構築や管理運営などの面での国内図書館に対する助言,国際協力を進めるセミナーの開催など,多方面のサービスを展開した。しかし,1996年にサービスの見直しが始められ,1998年に閉鎖の方針が定まる。ここでは以下,DBIの閉鎖に至る経緯を概観し,閉鎖後のサービスの見通しについて述べる。

統一後の財政的な逼迫から,連邦ドイツでは既存機関の存廃が議論に上る。1994年に教育計画および研究奨励のための連邦・州協議会(Bund-Lander-Kommission fur Bildungsplanung und Forschungsforderung: BLK)は,連邦・州政府が共同で運営する学術機関の実態調査を学術審議会(Wissenschaftsrat)に要請した。これを受けて1996年秋に,学術審議会委員と図書館専門家グループがDBIを調査し,翌97年の報告書の中で,(1)予算措置の継続を疑問視するとともに,(2)文献情報提供のような必要性の高いサービスについては,他の機関に移行し存続させることを勧告した。この結果,1998年3月にBLKがDBIに対する予算措置の打ち切りを決議し,DBI閉鎖の方針が定められたのである。現在,ベルリン州政府の学術・研究・文化局の管理下にEDBIが置かれ,サービスの移管や残務整理が進められているが,これも連邦・州政府による追加的な予算措置が終わる2003年をもって閉鎖される予定である。

DBIの閉鎖によって従来のサービスはどうなるのだろうか。受託研究やプロジェクトの立案などDBIにおける多くのサービスは廃止されたが,必要性の高いものは他機関への移管や新設の中央機関への継承が図られている。例えば,DBIで構築されてきた雑誌データベース(ZDB)は,現在,プロイセン文化財団ベルリン国立図書館(Staatsbibliothek zu Berlin-Preussischer Kulturbesitz)の管理下に移されており,データ作成の規格統一についてはドイツ図書館(Die Deutshce Bibliothek)の責務となった。また,文献提供サービスSUBITOの運用は,1999年12月に民間のSUBITO協力機構(SUBITO-Arbeitsgemeinschaft)に移されている。これ以外にも,学校図書館向けの新刊本リストの作成が図書館購買センター(Einkaufszentrale fur Bibliotheken: EKZ)によって担われることになったほか,雑誌Bibliotheksdienstの発行が近くベルリン中央州立図書館(Zentral- und Landesbibliothek Berlin)に委ねられる予定である。

また,1998年4月,文化問題に関して意見の取りまとめを図る州文化相常設会議(Standige Konferenz der Kultusminister der Lander in der Bundesrepublik Deutschland: KMK)が開かれ,将来的にDBIに代わる中央機関を設立することが提議された。この中央機関の主な役割は,国内の図書館に対する情報提供,EU参加国との図書館問題の調整,国際協力の促進である。図書館界での議論を踏まえ,連邦・州政府は中央機関をプロイセン文化財団に付属して設けることで合意した。2000年1月に関係者の初会合が開かれ,国際関係活動についてはドイツ図書館協会連合(Bundesvereinigung Deutscher Bibliotheksverbande)が中央機関を主導する旨が決められた。当面の課題は,2003年にベルリンで開かれるIFLA大会に向けた組織作りである。付言すれば,この中央機関には『ドイツ図書館統計(Deutsche Bibliotheksstatistik)』の編集も引き継がれる見通しである。DBIにおけるサービスは,いわばスリム化されてこの新しい機関に継承されることになる。

最後に,DBI閉鎖後の職員の動向について付け加える。職員の多くは再就職したが,EDBIで残務整理に当たっている者も少なくない。彼らが強制的に解雇されることはなく,2003年までに再就職しない職員はベルリン州政府に再雇用される運びとなっている。

東京大学大学院:三浦 太郎(みうらたろう)

注:本稿を作成するにあたり,Elisabeth Simon氏(旧ドイツ図書館研究所国際交流部長)の寄稿”The German Library Institute was dissolved at January 1st 2000″を参照した。
Ref: Ad-hoc-AG ”Zukunft des Deutschen Bibliotheksinstituts” der Standigen Konferenz der Kultusminister in der Bundesrepublik Deutschland. Konzept uber unverzichtbare uberregionale bibliothekarische Serviceleistungen. 1998.4 [http://www.dbi-berlin.de/dbi_inf/archiv/dbi-konz.htm](last access 2000.6.15)
Uberblick uber die Dienste des (E)DBI[http://homepages.uni-tuebingen.de/juergen.plieninger/edbi.htm](last access 2000.6.15)
(E)DBI: Der Senat hat beschlossen… BuB-Journal 51(10/11) 595, 1999
Flemming, Arend. BDB und DBI: Stellungnahme der BDB-Mitgliedsverbnde. BuB-Journal 52(3) 163-164, 2000
Beyersdorff, Gunter.(河井弘志訳)ドイツ図書館研究所(DBI)の危機 図書館雑誌 92(7) 554-556,1998