CA1144 – フランクフルトドイツ図書館が新装開店 / 小関達也

カレントアウェアネス
No.217 1997.09.20


CA1144

フランクフルトドイツ図書館が新装開店

フランクフルトのアディッケス通り1番地に,フランクフルトドイツ図書館(Deutsche Bibliothek Frankfurt am Main)の新館が完成した。今年の5月14日,コール首相やロート市長,ウェッジワース国際図書館連盟会長も出席してその開館式が行われた。

ドイツの中央図書館であるドイツ図書館(DDB=Die Deutsche Bibliothek)は3館からなる。ライプツィヒのライプツィヒドイツ図書館(Deutsches Bucherei Leipzig)と国立ベルリン音楽資料館(Deutsches Musikarchiv Berlin)とフランクフルト図書館である。

ドイツ図書館の歴史は古い。およそ150年前の1848年,フランクフルト国民会議が帝国図書館の設立を決定した。もっとも,この構想はドイツ統一運動の挫折と共に消えていき,ドイツ図書館構想が具体化するのはもっと後のことであった。

1906年にドイツ書籍販売組合が,ドイツ語文献を収集・保存する図書館の新たな構想をスタートさせ,1912年にライプツィヒ市及びザクセン州とドイツ図書館(Deutsche Bucherei)設立の契約を結ぶ。この契約によれば,ドイツ図書館は1913年以降の国内出版物と国外発行ドイツ関連文献・ドイツ語文献を収集し,書誌を作らなければならない。1916年にオスカー・プッシュの設計による建物が完成。1923年からは国も運営に参加した。

第二次世界大戦後の東西分裂によりライプツィヒ図書館の中央図書館としての機能は停止した。1946年11月,西ドイツは新たな中央図書館としてフランクフルト図書館を設立。戦後の国内出版物・国外発行ドイツ語文献を収集し,全国書誌を作成させた。当初フランクフルト図書館は市立図書館や大学図書館と共にかつてのロスチャイルド図書館の建物に入っていたが,1959年にギーファーとメックラーが設計した建物が完成した。

この建物には200万冊の収納能力があったが,早くも1962年には拡張の必要性が明らかになった。何回かの拡張工事も長期的解決には至らず,1982年に新館設計案を募集した。1984年,新館の設計はシュツットガルトの建築家グループ「アラト−カイザー−カイザー」に決まった。

1990年の東西ドイツ統一で,ライプツィヒ図書館があるのにフランクフルトの新館を作る必要があるのかという議論が起きた。結局は新館建設が決まったものの,着工は1992年にずれ込んだ。しかし予定通り1996年に完成,閲覧室はすでに1997年3月24日から公開されている。そして5月14日に公式の開館式が行われた。

新館の内装はコンクリート・ガラス・鋼・木材の4素材を主としており,静かで落ち着いた雰囲気を出している。閲覧室からはガラス越しに中庭が見えるが,外に出ることはできない。

その中庭の下に3層,総面積3万m2の書庫がある。書架はすべて移動式で1,800万冊を収納できる。さらに600万冊分の拡張が可能で,おまけにアディッケス通りの向かいに4,000m2の敷地を確保,こちらにも書庫を作って地下トンネルで本館と結ぶ予定である。

書庫の天井は戦争にも耐えられる作りになっており,壁と床は地下水から書庫を守るため二重風呂桶構造になっている。また,地下水の浮力が風呂桶を押し上げるため,重しとして7万トンの鉄鋼を使っている。

新館の特徴のひとつが,大幅な電子化である。検索には新たに導入されたOPACを使う。端末の前でボタンを押せば,ドイツ図書館全館の650万点の蔵書を検索できるのだ。納本された資料は直接コンピュータに入力され,データベースは毎晩更新される。ただ,新刊が閲覧できるようになるには3カ月ほどかかる。

閲覧時間は朝10時から,月−木が夜8時まで,金曜が6時まで,土曜が5時までである。ライプツィヒ図書館やベルリン音楽資料館は朝8−9時には始まるのだが,フランクフルト図書館は「人的理由のため,当分の間」10時にしか開けられないのだという。

小関 達也(こせきたつや)

Ref: Jopp, Robert Klaus. Der Neubau fur Die Deutsche Bibliothek in Frankfurt am Main. ABI-Technik 17 (2) 117-128, 1997
Frankfurter Rundschau 1997. 3. 24; 5.15
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