カレントアウェアネス-E
No.118 2007.11.28
E726
電子ジャーナルと利用者行動:最新研究のレビュー<文献紹介>
Rowlands, Ian. Electronic journals and user behavior: a review of recent research. Library & Information Science Research, 2007, 29(3), p.369-396.
電子ジャーナルの利用について研究する場合,テネシー大学のテノピア(Carol Tenopir)による電子ジャーナルの1995年から2003年までの研究の概観と分析は,その出発点となるものである(E129参照)。最近,ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン図書館・文書館・情報研究大学院出版センター(Centre for Publishing, School of Library, Archive and Information Studies, University College of London)のローランズ(Ian Rowlands)が,この10年ほどの雑誌システムの重要な変化の側面,特に電子ジャーナルの利用の動向をとらえるためにレビューをまとめた。ローランズはSocial Science Citation Indexに収録されている,1995年から2006年までに出版された文献の体系的な検索に基づき,テノピア以降(post-Tenopir)の文献の分析を行っている。
レビューに収録された文献は87で,内訳は図書2,レビュー6,研究論文75,会議資料1,レポート3であり,英語の研究論文が大半を占めている。収録文献の年代は1994年以前が3,1995年から1999年までが2,2000年から2003年までが46,2004年から2006年が36であり,大半の文献は電子ジャーナルの利用が定着した2000年以降の刊行である。収録点数の多い著者は,ニコラス(David Nicholas)をリーダーとし,ローランズも所属するCiberのグループが10,テノピアやピッツバーグ大学のキング(David King)のグループが10であり,この2つのグループが電子ジャーナルの利用研究を牽引したことが伺える。レビューは4つの部分から構成され,「学術生産物と利用の変化しつつある状況」では22,「デジタルへの移行」では31,「主題分野と情報利用」では9,「変化しつつある利用者行動」では40の文献を扱っている。ここからは,主題分野と情報利用の関連についての研究が余り進展していないことがわかる。
ローランズのレビューは,主要な研究について知見を表や要約の形で列挙し,全体のまとめと今後の研究課題も提示しており,テノピアのレビュー以降の欠落を埋めるとともに現時点における電子ジャーナルの利用研究についての到達状況を示すものといえよう。(東北大学附属図書館:加藤信哉)
Ref:
http://www.clir.org/pubs/reports/pub120/pub120.pdf
E129