カレントアウェアネス-E
No.103 2007.03.28
E623
オープンアクセス運動に対し出版界が立場を表明(欧州)
欧州連合(EU)内では,研究助成成果のオープンアクセスを求める運動(E604参照)や欧州委員会(EC)による学術情報のアクセス,提供,保存に関する通知(E611参照)など,学術情報の流通に関係した各機関の動きが活発化している。このような中,「これまでは沈黙を守ってきた」とする出版界から2007年2月13日,学術研究における出版社の役割を改めて説明・主張する10か条の「ブリュッセル宣言(Brussels Declaration)」が発表された。
この宣言ではまず,出版社の使命は「経済的に持続可能なビジネスモデルによって知識を最大限に普及させることである」として,出版社が学術研究および学術界の支援を行ってきたことが強調されている。その上で,どのような媒体で出版するにしても費用がかかること,特に査読(peer review)のための費用は必要不可欠であること,そしてそのための費用を賄うために,研究成果のオープンアクセス化に対しては十分な公開猶予(embargo)期間が必要であるとする。学術雑誌の記事の相当部分が無料で見られるようになると,購読契約のキャンセルが増え,結果として査読システムが崩壊するのではないかとしているのである。
一方で,ECの通知の中でも課題として挙げられていた「研究に使用した生のデータのオープンアクセス化」については,賛成する意が示されている。
この宣言は当初,35の出版社と8つの出版協会の署名で発表されたが,その後に賛同する出版社・出版協会も増えている。同時に出されたプレスリリースでは,ECの通知に対して「対話の場を開くものである」と評価しつつも,「なぜ政府の介入が必要なのか」「特定のビジネスモデルを推奨するものではないか」と疑義も呈しており,このような出版界の意見に対するオープンアクセス推進派,ECの対応が注目される。
Ref:
http://www.stm-assoc.org/documents-statements-public-co /2007%20-%2003-12-07%20Brussels%20Declaration.pdf
http://www.stm-assoc.org/press-releases/2007.02%20Brussels %20Declaration%20Press%20Release%20130207.pdf
http://www.stm-assoc.org/press-releases/2007.02 %20STM%20Press%20Release%20EC%20Communication%20on%20Scientific%20Information.pdf
http://www.stm-assoc.org/
http://www.iwr.co.uk/information-world-review/news/ 2184595/stm-manifesto-rubbishes-open
E604
E611