カレントアウェアネス-E
No.76 2006.02.01
E445
学術雑誌のシステムとオープンアクセス <文献紹介>
Drott, M. Carl. Open Access. Annual Review of Information Science and Technology. (40), 2006, 79-109.
昨年も多くの関心を集めたオープンアクセス運動(E294,E338参照)は,図書館情報学分野の代表的レビュー誌である”Annual Review of Information Science and Technology”に1テーマとして採用されるまでになった。本稿は,オープンアクセスと題されてはいるが,学術雑誌全体に焦点を当てており,その仕組みや学術コミュニケーションの中で果たす役割・機能を再確認しながらオープンアクセスとの関連をまとめている。
オープンアクセスは社会政治的な問題であるという認識から,経済,技術,社会正義といった観点から説明がなされている。たとえば,経済的な問題として,査読制度や編集について伝統的なモデルで必要とされる費用を説明し,学術雑誌の刊行にどれだけの金額が必要とされるかを解説している。そして,オープンアクセス雑誌(CA1559参照)の運営刊行を誰が負担すべきなのかという視点から,たとえば著者支払いモデル(CA1543参照)やアーカイビングにまつわる問題などに触れているほか,Google Scholar(CA1564参照)といった検索ツールなどについても概観している。
筆者は最後に,オープンアクセスの成否は個々の研究者次第であるとし,「地球規模で考え,身近なところから行動しよう(Think globally, act locally)」というスローガンで締めくくっている。
(慶應義塾大学大学院:三根慎二)