E294 – 高まるオープンアクセスへの注目 <文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.52 2005.02.02

 

 E294

高まるオープンアクセスへの注目 <文献紹介>

 

Special focus on Open Access: Issues, Ideas, and Impact. Serials Review. 30(4), 2004, 257-328. (online), available from < http://www.sciencedirect.com/science/journal/00987913 >, (accessed 2005-01-28).

 オープンアクセスをめぐっては,米国・英国(CA1543, CA1544参照)のみならず欧州諸国においても肯定的な動きが散見されるようになってきた。日本でも,この分野で最も著名な人物の一人であるハーナッド(Stevan Harnad)氏が来日公演を行うなど,関心の高まりを感じることができる。こうした世界的な傾向を受けてか,Serials Review誌では,「オープンアクセス2004」と称した特集号を組んでいる。

 執筆者は,研究者,商業出版社,学協会といった立場から,現状のレビューをはじめ,「オープンアクセスの基準」,「商業・非営利出版社から見たオープンアクセス」,「著者から見たオープンアクセス」,「オープンアクセスの流通・管理・アクセスモデル」といった多様な話題について触れている。たとえば,ゲディ(Richard Gedye)の「オープンアクセスはストーリーの一部でしかない」では,図書館員の役割として,図書館内外でのロビー活動や,オープンアクセスを取り巻くあらゆる問題を研究者が理解するよう支援することが必要だと指摘している。すべての話題が網羅されているというわけではないが,各論文で要領よく現状と問題点がまとめられているため,本特集号を読むことによってオープンアクセス全体を俯瞰することができる。

 オープンアクセスの動向は,毎日のように何らかの動きが出ているが,図書館員は利害関係者として,少なくとも現状の確認作業程度は強く求められているといえよう。

(慶應義塾大学大学院:三根慎二)

Ref:
http://www.nii.ac.jp/metadata/irp/harnad.html
CA1543
CA1544