E293 – 南アジアにおける伝統的知識のデジタル図書館構想

カレントアウェアネス-E

No.52 2005.02.02

 

 E293

南アジアにおける伝統的知識のデジタル図書館構想

 

 現代の医薬品開発では発展途上地域で伝統的治療に使われていた植物などが材料になることが多いが,それらの地域では植物由来成分などが特許権で先進国企業に囲い込まれてしまうことに反発が広がっている。生物資源の略奪行為(biopiracy)と呼ばれるこうした動きを防ぎ,伝統的知識(Traditional Knowledge)の知的財産化を図ろうと,南アジア7か国で構成される南アジア地域協力連合(SAARC)は2004年12月,伝統的知識のデジタル図書館ネットワーク計画を発表した。特許の出願,審査,異議申し立て全ての段階で各国の特許庁に参照されることを狙いとしている。

 SAARCドキュメンテーション・センターが中心となり,伝統的知識の統一的な分類法,国際特許分類へのリンキングなどの枠組みを開発し,各国のデジタル図書館を結ぶ。各国は,古くから伝わる伝承医療知識の多言語での文書化,データベース化を2000年頃から進めているインドをモデルにデジタル図書館を設置する。

 伝統的知識の権利保護に関して議論を行っている世界知的所有権機関(WIPO)もこの構想を支援しており,また,他のアジア諸国やアフリカ各国も興味を示している。

Ref:
http://www.scidev.net/News/index.cfm?fuseaction=readNews&itemid=1840&language=1
http://www.financialexpress.com/fe_full_story.php?content_id=78706
http://www.wipo.int/tk/en/tk/index.html