E2884 – 第21回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>

カレントアウェアネス-E

No.523 2026.05.28

 

 E2884

第21回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>

国立国会図書館関西館図書館協力課・レファレンス協同データベース事業事務局

 

  2026年3月2日、国立国会図書館(NDL)は、「レファレンスサービスの今後―レファレンス協同データベースの20年―」をテーマに、第21回レファレンス協同データベース(以下「レファ協」)事業フォーラム(E2786ほか参照)をオンライン形式で開催した。今回のフォーラムは、インターネットやデジタル情報資源が欠かせないものとなり、さらに生成AIの利用が急速に拡大するなど図書館を取り巻く環境が大きく変化している状況に焦点を当てた。社会や情報源の変化が図書館やレファレンスサービスにもたらす影響についての識者による講演と、コーディネーターと登壇者によるフリートークにより、レファレンスサービスや本格事業化20年を迎えるレファ協の今後の在り方を考える内容であった。

●講演1「レファレンスサービスの現在とこれから」/間部豊氏(帝京平成大学人文社会学部准教授(所属・役職はフォーラム開催時のもの。以下同じ。))

  レファレンスサービスに対して一般的に抱かれているイメージや構造を取り上げ、レファレンスサービスとその周辺領域を図に整理し、「情報ニーズ」「情報リテラシー」「人々の情報探索行動」について解説した。続いて「図書館におけるレファレンスサービスの現在」について、図書館が情報入手の手段の一つとして機能を果たしアナログ資料の蓄積を行ってきたこと、また、図書館職員が利用者の情報リテラシーを補い、支援しながら、情報提供してきたことを特徴として示した。その後、近年の調査資料から分かる情報探索行動の変化を紹介し、続けて、生成AIを始めとする情報探索技術の進化を踏まえたレファレンスサービスの在り方について考察が示された。

  最後に、これからのレファレンスサービスにおける図書館の利点として、(1)図書館情報資源を活用すること(例:生成AIの学習データに含まれていない莫大な情報を有するアナログ資料の蓄積・活用)、(2)図書館が情報探索手段を提供すること(例:情報探索戦略の構築支援としてのレファ協の生成AI対応)、(3)図書館職員が情報探索に介在すること(例:レファレンスインタビューを通じた情報ニーズの言語化・明確化)の三点が挙げられるとの見解を示した上で、レファレンスサービスを通じて人的な情報探索の援助を行うことの意義は依然大きいと指摘した。

●講演2「変わりつつあるレファレンス情報源の未来を皆で考える」/杉江典子氏(東洋大学文学部准教授)

  近年のレファレンスサービスが「提供の場」「利用者の情報行動」「情報源」の三点において変化していることを示す調査や参考文献を紹介し、インターネットを利用したサービス提供及び情報探索が広まっていることや、レファレンスブックの出版点数が減少し続けていることを示した。また、電子化が非常に進んでいる分野と、あまり進まない分野があり、そのアクセス方法や構造化の状態等が多様になっているとの見解が示された。その上で、特に情報源の変化によって情報源の体系や種別の境界が曖昧となり、図書館員等にとって適切な情報探索の道筋が考えにくくなっているのではないか、レファレンスブック作成のノウハウを蓄積した出版社が撤退していることにより安定的に質の高いレファレンス情報源を入手できる見通しが立ちにくくなっているのではないかとの問題提起がなされた。最後に、質の高いレファレンスサービスを提供し続けるには、図書館関係者がレファレンス情報源に関心を持ち、生産プロセスに関与することが必要なのではないかとの指摘があった。

●講演3「大学図書館における情報リテラシー教育の展開と動向」/渡邊由紀子氏(九州大学附属図書館研究開発室准教授)

  国内外における情報リテラシー教育の展開を振り返り、その取組の背景や意義の確認がなされた。その後、大学図書館における情報リテラシー教育の動向について、実践の具体例として九州大学附属図書館の活動を写真や統計を用いながら紹介した。最後に、情報リテラシー教育の可能性と課題として、学習・教育支援やオープンサイエンスに対応する研究支援を行うための教育内容の拡充、パスファインダー等の教材のオープン化、教育内容の量・質の拡張のための図書館職員をハブとする多様な人材との協働等が求められていると整理された。そして、大学図書館が情報リテラシー教育の「のびしろ」を広げることで、図書館を取り巻く環境や利用者の情報行動の変化に対応する能動的なレファレンスサービスとしての情報リテラシー教育を発展させられるのではないか、との可能性が示された。

  講演後、レファ協事業事務局から、「レファレンス協同データベース事業20年の歩み」と題して、レファ協参加館数や登録データ数等の統計を紹介した。また、レファ協における主要な出来事を年表形式で振り返りながら過去のレファ協フォーラムで取り上げた内容を説明した。レファ協事業事務局報告については、NDL公式YouTubeチャンネルでアーカイブ映像を公開している。

●フリートーク

  上岡真紀子氏(帝京大学共通教育センター教授)がコーディネーターとなり、講演者3名に加えて伊藤民雄氏(実践女子大学図書館事務部次長)、田子環氏(神奈川県立厚木清南高等学校司書、レファ協事業企画協力員)、及びレファ協事業企画協力員4名を交えたフリートークが行われた。その中では、参加者から寄せられた質問への回答のほか、レファレンス情報源をめぐる変化の現状と課題をどのように捉えているか、生成AIの登場が利用者の行動に影響を与えている点についてどう考えているか、今後の情報リテラシー教育として何が重要となるか等について意見交換がなされた。フリートーク登壇者からは、今後のレファ協に期待することとして、生成AIの技術活用、情報リテラシー教育の事例や教材を共有するためのプラットフォーム形成、動画を始めとするマルチメディアの登録やマルチメディアを閲覧できるURLの掲載、図書館以外のコミュニティや個人との連携強化といったアイデアが寄せられた。

  なお、このフォーラムの配布資料はレファ協ウェブサイトに掲載しているほか、後日、記録集を同ページに掲載する予定である。

Ref:
“第21回レファレンス協同データベース事業フォーラム「レファレンスサービスの今後―レファレンス協同データベースの20年―」”. レファレンス協同データベース.
https://crd.ndl.go.jp/jp/about/forum/r7_21.html
レファレンス協同データベース.
https://crd.ndl.go.jp/reference/
“第21回レファレンス協同データベース事業フォーラム 事務局報告”. YouTube. 2026-05-18.
https://www.youtube.com/watch?v=7E54SEgHvxg&list=PLXvKjMC1JnVt78N3RlBrP_OmsImWiE-hb
国立国会図書館関西館図書館協力課・レファレンス協同データベース事業事務局. 第20回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>. カレントアウェアネス-E. 2025, (500), E2786.
https://current.ndl.go.jp/e2786