カレントアウェアネス-E
No.528 2026.08.06
E2902
「わかっていいとも!」:ラーニング・コモンズにおける学際交流支援企画
京都大学桂図書館・西川真樹子(にしかわまきこ)
京都大学附属図書館・古森千尋(こもりちひろ)、中川美葉(なかがわみは)、吉田弘子(よしだひろこ)
●ラーニング・コモンズの現状と課題
年間入館者数約90万人を数え、国立大学図書館でトップクラスの利用者数を誇る京都大学附属図書館(以下「当館」)の1階に、ラーニング・コモンズ(以下「LC」)が設置されたのは2014年である。LCは、大学の基本理念である「対話を根幹」とした「自学自習」を促し利用者が気軽に話せる場として、館内で最も活気あるエリアとなっている。
しかしコロナ禍により、以前は学生スタッフが担っていた学習サポートデスクが利用低迷により2021年度に終了するなど運用が変化した。以降、LCは学生が自発的に集まる場としては機能しつつも、図書館の「場貸し」に近い状態が続いていた。この状況を打破し、学際融合や総合知を育む土壌とするために立ち上げたのが、「ラーニング・コモンズをフィールドとした学際交流支援企画」である。
●企画の概要:「わかっていいとも!」の挑戦
その第1弾として開催したのが「わかっていいとも!―1分で研究をわかりやすく語る、学生同士の学際交流イベント―」である。スライド等は一切使わず、「言葉のみ」で専門外の人に研究を伝える学生同士のトークイベントである。2025年12月1日(月)から5日(金)までの5日間連続(各日12時45分から13時まで)で開催した。
- 構成:スピーカー1名(発表者:学生)、メンター1名(質問者:学生)、フロア(聴衆:京大構成員)。
- 進行:スピーカーが1分間で研究を紹介し、メンターが質問してスピーカーが答える。その後フロアを交えた質疑応答を行い、聴衆は「応援うちわ」(後述)で理解度を示す。以上を15分で完結させる。
カギとなる学生(スピーカー・メンター)の募集については、本学の総合研究推進本部が行っている、学内の学際交流の場「百万遍談議」の世話人を務める宇佐美文理特定教授(京都大学大学院総合生存学館)と沼田英治名誉教授(開催時は京都大学総合研究推進本部特定教授)にアドバイザーとして多大な協力を得た。
●「耳学問」と理解を可視化する「うちわ」の演出
開催時はLC内の一区画をあえて完全には仕切らず、他のスペースの利用者が通りがかりに足を止められるオープンな環境を維持した。
広報はウェブサイトやSNS、ポスターに加え、シラバスシステムへの掲載、館内放送など重層的に展開した。当初は集客の不安もあったが、連日20名前後の参加があり、前日の様子を見て「自分も話したい」と名乗り出る学生が現れるなど好反応を得た。
また、一人の「わかった」で終わらせずフロア全体で理解を深めるというコンセプトを視覚化するため、職員手作りの「応援うちわ」を導入した。聴衆は導入段階では「まだわからない」面を向け、理解が進むごとに「わかった」面へひっくり返す。この仕掛けにより、スピーカーは理解度をリアルタイムで把握でき、フロアには「傍観者ではなく、場を共創する参加者である」という意識が醸成された。
●成果と考察:個の学びから「多対多」の学びへ
アンケートからは「メンターから投げかけられる質問が、専門領域の近い人と接していると出てこないものだったので、非常に興味深かった(スピーカーの感想)」「即興で質問するのは、やはり少し難しかった。ただ普段の授業や発表の場面でも役立つ技術だと思うので、良い経験になった(メンターの感想)」との声が寄せられた。
かつての学習サポートデスクが「個対個」の場だったのに対し、今回は不特定多数が議論に加わり好奇心を刺激し合う「多対多」の学びの場となった。LCが対話を通じて学びを深める場であるならば、図書館員がそのための「仕掛け」をデザインする重要性を改めて認識する機会となった。
「わかっていいとも!」は2026年6月にも開催したほか、12月にも予定している。2026年6月開催では、想定していなかった英語での登壇希望があったことから、学部留学生プログラムKyoto iUPの協力も仰ぎ「番外編<英語回>」も企画中である。また、新企画(おしえて!あなたのコア・ブック)も展開中である。今後も当館は物理的な「場」の維持にとどまらず、そこでの学びの質を整えるべく奮闘を続けたい。最後に、次回に向けてフロアに問いかけたい。「今後も当館の企画に、期待してくれるかな?」――「いいとも!」
Ref:
“【附属図書館】イベント:隣の誰かの研究を、ちょっと聞いてみませんか?(12/1-12/5)”. 京都大学図書館機構. 2025-11-18.
https://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/bulletin/1405774
“百万遍談議”. 京都大学総合研究推進本部.
https://www.research.kyoto-u.ac.jp/dangi/
“募集終了しました【附属図書館】あなたの研究を1分で話してみませんか?(イベント「わかっていいとも!」6月登壇者募集)”. 京都大学図書館機構. 2026-05-25.
https://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/bulletin/1408056
“【附属図書館】トークイベント「わかっていいとも!」を開催します(6/22-6/26)”. 京都大学図書館機構. 2026-06-19.
https://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/bulletin/1408775
Kyoto iUP.
https://www.iup.kyoto-u.ac.jp/
“【附属図書館:アンケート】おしえて!あなたのコア・ブック(2/16-3/31)”. 京都大学図書館機構. 2026-02-16.
https://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/bulletin/1406986
“開催日決定!【附属図書館・桂図書館】トークイベント「北川進×『荘子』」(5/27)”. 京都大学図書館機構. 2026-05-01.
https://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/bulletin/1408272
“回答展示中!(-9/30) 【附属図書館:アンケート】おしえて!あなたのコア・ブック”. 京都大学図書館機構. 2026-05-28.
https://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/bulletin/1408587
