E2903 – 琉球大学附属図書館医学部分館でのカビ被害資料の清掃作業

カレントアウェアネス-E

No.528 2026.08.06

 

 E2903

琉球大学附属図書館医学部分館でのカビ被害資料の清掃作業

琉球大学附属図書館・伊藤卓也(いとうたくや)

 

  琉球大学附属図書館医学部分館(以下「当館」)は、2025年12月8日から2026年1月20日および2026年4月15日から5月12日にかけて、館内書架エリアにおいて発生したカビ被害資料の清掃作業を実施した。本稿では、発生の経緯、清掃作業の概要、ならびに原因と今後の対策について報告する。

●発生の経緯

  当館は、本学医学部の西普天間キャンパス移転に伴い、新営された教育棟2階に、2025年4月にリニューアルオープンした図書館である。しかしながら、開館から半年ほど経過した同年11月、書架に排架している資料の一部にカビの発生が確認された。調査の結果、閲覧室の湿度が平均75%を超える高湿度状態であったこと、閲覧室に隣接する固定書架から放射状にカビ被害が広がっていることが判明した。特に、古い洋書やクロス装丁の資料に被害が集中しており、さらに館内では、高湿度環境に生息し、カビの胞子等を餌とするチャタテムシ類が多数確認された。

  関係部署で情報共有のうえ、一次対応として、被害の進行を防ぐため、まず重度のカビ被害が確認された資料311冊について優先的に抜き出しを行った。次に被害拡大の防止と健康への配慮の観点から、利用者の館内立ち入りを一部制限して、固定書架全体に対する清掃作業を早期に実施する方針を決定した。実施時期は、利用者数が比較的落ち着く12月とし、併せて本学施設担当とも連携してカビ発生の原因調査や対応策について協議を進めた。

●清掃作業の概要

  清掃作業は以下の要領で進めた。

  1. 対象資料を棚から抜き出し、掃除機で埃とカビを除去する
  2. 資料の6面(表紙・裏表紙・背・天・地・小口)を75%エタノールで拭き上げる
  3. 清掃済み資料を排架待ちエリアへ移動する
  4. 資料を抜き出した棚およびブックエンドを80%エタノールで拭き上げる
  5. 清掃完了後、資料を元の棚に戻す

  作業は二期に分けて実施し、第一期(2025年12月)は1日平均14人体制で1,740棚を、第二期(2026年1月)は1日平均9人体制で1,134棚を完了した。この清掃の終了後、未清掃エリアである集密書架の洋雑誌の一部にカビが発生したため、追加の清掃作業(2026年4~5月)を実施した。この時は1日平均6人体制で2,340棚を完了した。第一期・第二期・追加の清掃作業を併せて、清掃対象資料は約10.5万冊、書架5,214棚に及んだ。延べ作業人数は379人に達し、職員総出の取り組みとなった。

  また、清掃作業にあたって購入した物品(マスク、拭き取り用ペーパー、エタノール、手袋など)の経費は約60万円であった。

●清掃期間中の利用制限と対応

  第一期は、ラーニング・コモンズのみ利用可能とし、閲覧室と書架エリアへの立ち入りを制限した。第二期では清掃が全体の6割ほど完了していたことから、未清掃エリアをビニールカーテンで区切り、閲覧室と清掃済み書架エリアの利用を再開した。追加清掃時は、集密書架のみにカビが確認されたため、そのエリアのみ利用制限し、他エリアの利用は通常どおりとした。

  利用制限エリアの資料については、利用者がカウンターで依頼、もしくはウェブフォームで事前申請を行うことで、職員が清掃のうえ提供する体制を整備した。広報はウェブサイトや学内通知等で行い、大きな混乱は生じなかった。

●原因と今後の対策

  カビ発生は、換気で取り込んだ外気の除湿が不十分だったことにより、高湿度の環境が長期間続いたことが原因と考えられる。当初、書架内に温湿度計を未設置だったため正確な数値は不明だが、閲覧室の温湿度計の記録では2025年5月~11月の平均湿度が75%以上であったことが確認された。

  対策として、冬季(2026年1月以降)は館内暖房の稼働により、湿度55%前後を維持できた。併せて、以下の改善策を実施した。

  • 書架内への温湿度計の設置と継続的なモニタリング
  • 埃を蓄積させないための定期的な清掃
  • 閲覧室と書架エリアの間への除湿機の設置・稼働

  しかし、春季に入り館内湿度の上昇が認められたことから、施設担当と協議し、除湿機・サーキュレーターの追加設置、ドライ運転の稼働、換気時間の調整等を行った。さらに、換気設備に再熱機能を追加し、流入する湿気を抑えることが可能か施設担当と検討を進めている。引き続き施設担当と連携し、より適切な資料保存環境の構築を図りたい。

  迅速に対応することができた背景には、2010年に本学図書館本館で発生したカビ被害への対応経験があり、発生後どのように行動すべきかを把握していたことが大きいと考えている。併せて、2026年2月には、今回のカビ被害の報告や過去のカビ・虫による資料被害の事例共有、本館の温湿度データを基に今後資料被害が発生し得る場所を検討する館内研修を実施した。今後も資料保存に関する職員の理解を深め、新たな資料被害の発生を防止していきたい。

Ref:
“【1/21~制限エリアの全面解除】医学部分館資料のカビ発生に伴う一部立ち入り制限のお知らせ”. 琉球大学附属図書館.
https://www.lib.u-ryukyu.ac.jp/info/19947/
“【5/13~制限エリアの全面解除】医学部分館資料のカビ発生に伴う一部立入制限のお知らせ”. 琉球大学附属図書館.
https://www.lib.u-ryukyu.ac.jp/info/21141/
国立国会図書館資料保存課. カビが発生した資料をクリーニングする. 2009.
https://www.ndl.go.jp/file/preservation/collectioncare/disaster_p/response/manual_mold.pdf
古謝久美子. カビと虫. 情報の科学と技術. 2011, 61(3), p. 127.
https://doi.org/10.18919/jkg.61.3_127