カレントアウェアネス-E
No.528 2026.08.06
E2904
フランスの図書館等のためのアクセシビリティ・ガイド
国立国会図書館利用者サービス部サービス運営課・福井千衣(ふくいちえ)
2025年12月11日、フランス文化省は、図書館等のためのアクセシビリティ・ガイド“Accessibilité en bibliothèques et en CDI”を公表した。これは、2019年6月に公布された、製品及びサービスのアクセシビリティ要件に関するEU指令を受けたものである。EU加盟国は、2022年6月28日までに同指令を国内実施するために必要な規定を採択し、2025年6月28日から適用することとされた。このため、同日以降に刊行された全ての新刊電子書籍は、「読みやすく、理解しやすい(FALC)」文章で、音声化され、点字ディスプレイ(パソコン等の画面上の文字を点字に変換し、点字で読めるようにするための機器)に対応し、ディスレクシアの読者にも適した、アクセシブルな形式で出版されなければならなくなっている。
このガイドは、図書館のほか、関係する省庁や非営利団体等の共同作業により作成されたものであり、図書館等(国、地方公共団体、学術機関、学校の各図書館等)におけるアクセシビリティの実現に向け、関連する法的枠組みや実務に関する推奨事項等を取り上げている。本稿では、その中から、示唆に富む分析を含め、有益な情報や指針を紹介する。
●障害者の人口統計学的概観、及び、それぞれのニーズに対応する法的枠組み
聴覚、視覚、運動機能の障害は加齢に伴って生じることが多く、その結果、60歳以上の人口における障害者の割合が高くなっている。一方で、2023年の統計では、フランスの義務教育課程の一般校に通う生徒のうち約4%が障害を抱えており、それら生徒の支援体制を学校側が整備することも求められる。高等教育、研究機関においても同様である。また、図書館を含む公共機関は、障害者サービスを向上させるため、障害者の雇用が義務付けられている。
●図書館のサービス計画、及び、アクセシビリティ担当者
図書館が障害者のニーズに対応できるようになるためには、長期的な視野でサービス計画を策定し、それを実施することが必要である。障害者を支援するためのアクセシビリティ担当者を任命することも有用である。当該担当者は、アウトリーチのための文化イベントにおいて連携機関と連絡調整を行うほか、デジタルアクセシビリティ担当者を兼ねることもある。なお、一般市民に開放された施設である図書館等は、施設のアクセシビリティとサービスについての情報を公開するため、公共アクセシビリティ登録簿に登録しなければならない。
●障害者を受け入れるための施設整備
障害者が利用者として尊重されていると感じられるように、図書館は、受付エリア、案内表示、図書館内の動線、照明、音響、その他の設備について配慮をしなければならない。
図書館内のレイアウト(とりわけ、受付エリア、書架間の通路、階段、避難経路について)のほか、館内外での動線を示すサインを含めた安全に関する推奨事項が示されている。
DAISY(アクセシブルな電子書籍の国際規格)プレーヤーを接続した、又は、DAISY対応ソフトウェアを搭載したコンピュータ、大活字キーボード、点字ディスプレイ、音声読書器(スキャナーで書籍から取り込んだ画像データをテキスト変換し、音声で再生するための機器)、拡大読書器等を整備することで、アクセシビリティを担保することができる。
●図書館の蔵書
図書館は、蔵書にアクセシビリティに関するメタデータを付与するほか、アクセシブルな資料(大活字、オーディオブック、点字、読みやすく理解しやすい形式等)、視覚障害者や聴覚障害者向けの映画やビデオゲーム、及び電子媒体の資料を充実させ、利用に供しなければならない。
●障害者に向けた広報
ウェブサイト等の広報媒体では、平易な言葉を遣い、直感に合致するナビゲーションを提供しなければならない。画像に代替テキストを付与する場合、関連する全ての情報を含む詳細な説明文を含める必要がある。動画等も活用し、幅広い対象に向けて発信することが推奨される。
読書に困難を抱える障害者を対象として効果的な広報を行うことは、図書館が提供する蔵書やサービスに対する認知度をも向上させる。定期的かつ効果的な広報は、書籍へのアクセスや読書に関する諸課題について、一般の人々、専門家、政策決定者に理解を深めてもらう上でも有効である。
●アウトリーチのための文化イベント
図書館は、認知度向上と信頼醸成のためのイベントを企画することが求められる。障害者に着実に情報を届けるために、他機関や非営利団体との連携を構築するのも有効である。支援スタッフ(教師、医療従事者、ソーシャルワーカー、ボランティア等)と連携すれば、個々の参加者のニーズに合わせた活動を展開することができる。また、これらのイベントは、他の国家的イベント、例えば“Biblis en folie”(熱狂する図書館)などの一部として組み込むことも考えられる。
●アクセシブル又は適応型の出版物を収集する国家ポータルサイト開設への展望
アクセシビリティに配慮して製作された、又は適応型の電子書籍及び書籍について、入手可能な全てのものを網羅的に収集するポータルサイトの構想が進んでいる。適応型の出版物とは、著作権法の例外規定に基づき、各種図書館又は非営利団体等が、障害者の読書が可能になるよう新たに製作した版(紙媒体・電子媒体とも)を指す。このポータルサイトの構築は、フランス国立図書館(BnF)が担当している。図書館は、障害者に対して、このプラットフォームの利用を促すことが期待されている。
以上、アクセシビリティ・ガイドに示された、フランスの図書館等における多角的な取組を紹介してきた。本稿が我が国の図書館におけるアクセシビリティ施策の一助となれば幸いである。
Ref:
“Accessibilité en bibliothèques et en CDI. Guide à l’attention des professionnels des bibliothèques et des CDI”. Ministère de la Culture. 2025-12-11.
https://www.culture.gouv.fr/thematiques/livre-et-lecture/actualites/accessibilite-en-bibliotheques-et-en-cdi.-guide-a-l-attention-des-professionnels-des-bibliotheques-et-des-cdi
“Accessibilité en bibliothèque : laissez-vous guider”. Agence régionale du Livre Provence-Alpes-Côte d’Azur. 2026-04-24.
https://www.livre-provencealpescotedazur.fr/la-vie-du-livre/actualites/accessibilite-en-bibliotheque-laissez-vous-guider
“Directive (EU) 2019/882 of the European Parliament and of the Council of 17 April 2019 on the accessibility requirements for products and services (Text with EEA relevance) ”. EUR-Lex.
https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/2019/882
濱野恵. EUのアクセシビリティ指令. 外国の立法. 2021, (287), p. 65-103.
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11643920
國分文音. FAL:フランスにおける読書しやすい空間づくり. カレントアウェアネス-E. 2025, (508), E2820.
https://current.ndl.go.jp/e2820
