E2908 – 2026年ISO/TC 46国際会議<報告>

カレントアウェアネス-E

No.529 2026.08.27

 

 E2908

2026年ISO/TC 46国際会議<報告>

ISO/TC 46国内審議委員会・安形輝(あがたてる)

 

   2026年7月6日から10日まで、イタリアのミラノにあるイタリア規格協会(Ente Italiano di Normazione:UNI)を会場として、ISO/TC 46(International Organization for Standardization/Technical Committee 46)の国際会議が開催された(E2808ほか参照)。TC 46は「情報とドキュメンテーション(Information and Documentation)」を担当する専門委員会である。総会週間の中で、TC 46総会と各分科委員会(Subcommittee:SC)総会および作業部会(Working Group:WG)が、対面とオンラインのハイブリッド形式で行われた。日本からは筆者と一部の専門家が現地参加し、TC 46国内審議委員会の各SC主査がオンラインで参加した。

●TC 46総会の概要

  今回のTC 46総会では、人工知能(AI)対応、既存のデジタル保存標準との連携、および他TCとの連携を伴う用語標準化が主要な議題として取り上げられた。

  AIに関する時限付きの部会(AdHoc Group 4:AHG 4)が最終報告を行った。この部会は本会議をもって解散となるが、AIがTC 46の対象領域(メタデータ等)に密接に関わっている重要性を鑑み、AIに関する常設の部会を置くことが決議された。

  デジタル保存領域では、METS、PREMIS、EADなどの外部標準規格の状況を評価し、ISOの枠組みでの連携を検討するため、新たに時限付き部会(AHG 5)が設置されることとなった。

  用語標準化について、用語調整部会(AHG 2)が作業を終え解散し、成果物は「TC 46白書(White Paper)」として公開される。また、AHG 2は用語に関する部会(WG 4)へ統合される。さらに、ISO/TC 37(言語と用語)との連携を強化するため、既存の合同作業部会において、ISO 10241-2の改訂および用語調整を推進することが決議された。

  日本に関連する動向として、翻字を扱う作業部会(WG 3)から日本語ローマ字表記の規格(ISO 3602)の改訂提案がされたが、詳細を詰めた上で再提案されることとなった。

●各分科委員会における議論

  日本が投票権を持たないSC 10以外の各分科委員会(SC)総会での審議概要は以下の通りである。

  • SC 4(技術的相互運用性)

      中国からの提案により学術出版におけるAI生成コンテンツ(AIGC)に関する作業部会が設置されること、図書館及び関連組織のための国際標準識別子(ISIL;ISO 15511)の国際登録機関としてProject ReShareを承認するためのCIB投票(Committee Internal Balloting:委員会内投票)を始めること等が合意された。中国からはAIGC以外にプレプリントやRAG(検索拡張生成)に関するプレゼンテーションが行われた。

  • SC 8(品質・統計・実績評価)

      プロジェクトの動向として、博物館の評価指標(ISO 21246)の改訂作業や、最終段階にあるアーカイブ実績評価指標(ISO 25244)のDIS(Draft International Standard:国際規格原案)投票の状況が共有された。

  • SC 9(識別と記述)

      中国提案の「データ論文(Data Papers)」に関する規格案について、CIB投票を通じて、規格策定等に参加する専門家の推薦を追加で求めることとなった。また、シソーラスの相互運用性を扱うISO 25964-2の改訂開始、ISCC(国際標準コンテンツコード)における情報識別に関する新たなTR(技術報告書)の開発推進などが合意された。日本ISMNセンターより国際標準音楽番号(ISMN;ISO 10957)の改訂提案のプレゼンテーションが行われた。直近でSR(Systematic Review:定期見直し)投票においてコメントが求められることとなった。

  • SC 11(アーカイブズ/記録管理)

      技術革新に伴う「記録」の定義の変化に対応し、SC 11の中心的な規格であるISO 15489-1の改訂を行う新たな作業部会の設置が決議された。また、記録管理とAI(ISO 25280)が、3部構成へと拡充され、それぞれ協議や策定が開始された。

●まとめ

  2026年のミラノ会議は、AIや大規模言語モデル、RAGなどのAI関連技術が、図書館、アーカイブ、出版流通といった情報とドキュメンテーション関連のあらゆる領域にいかに強い影響を与えているかを印象づけるものとなった。

  これに伴い、TC 46レベルでのAI関係の部会設置、TC 37(言語と用語)との用語連携など、領域横断的な取り組みが目立った。また、中国がAI、RAG、プレプリント、データ論文など戦略的な新規規格提案を次々と打ち出しており、この分野の主導権を握ろうとする姿勢を強めている。

  次回総会は、2027年5月下旬にフランス・パリ近郊のオーベルヴィリエにて開催される。また、2028年の総会は中国での開催が予定されている。

Ref:
“ISO/TC 46 – Information and documentation”. ISO.
https://www.iso.org/committee/48750.html
“METS – Metadata Encoding and Transmission”. Library of Congress.
https://www.loc.gov/standards/mets/
“PREMIS – PREservation Metadata: Implementation Strategies”. Library of Congress.
https://www.loc.gov/standards/premis/
“EAD – Encoded Archival Description”. Library of Congress.
https://www.loc.gov/ead/
安形輝. 2025年ISO/TC 46国際会議<報告>. カレントアウェアネス-E. 2025, (505), E2808.
https://current.ndl.go.jp/e2808
柳澤健太郎,奥田倫子. 2019年ISO/TC46国際会議<報告>. カレントアウェアネス-E. 2019, (373), E2161.
https://current.ndl.go.jp/e2161