E2907 – 韓国の図書館法改正:オンライン資料の納本対象拡大と納本除外等の根拠整備

カレントアウェアネス-E

No.529 2026.08.27

 

 E2907

韓国の図書館法改正:オンライン資料の納本対象拡大と納本除外等の根拠整備

国立国会図書館関西館図書館協力課・福山潤三(ふくやまじゅんぞう)

 

  2026年5月7日、韓国において、国立中央図書館(NLK)のオンライン資料納本対象を拡大するとともに、納本を受け付けないこと(納本除外)等を可能とする図書館法一部改正法律案(議案番号第2218534号)が国会本会議で可決され、同年6月2日に公布された。同年12月3日から施行される。本稿では、法改正の背景、概要と韓国国内の反応を紹介する。

●法改正の背景

  NLKは、2016年に、国際標準資料番号(ISBN又はISSN)が付与されたオンライン資料の納本制度を導入した(E1836参照)。しかし、国際標準資料番号が付与されていないデジタル形式の公共刊行物や学位論文は、納本対象とされていなかった。

  また、2013年からウェブトゥーン(漫画)、ウェブ小説といった連載形式の資料にISBNが付与されていたが、ISBNは、内容が固定され、完結した資料に付与するものという考え方から、代替となる識別体系が検討されていた。その結果、2022年に、NLKの韓国文献番号運営委員会において、2026年から連載形式の資料へのISBN付与を取り止めることが決定された。その代わりに国家標準のコンテンツ識別体系(Universal Contents Identifier:UCI)に基づく識別子を付与することが、文化体育観光部において決定された。一方、オンライン資料の納本対象は、国際標準資料番号が付与された資料に限られていたため、UCIに基づく識別子が付与されたオンライン資料も納本対象となるよう、法改正が必要となっていた。

  また、生成AIの普及に伴い、1年間で9,000タイトルの資料を製作し、NLKに納本を申請する出版社が現れる等、機械的に資料を大量生産し、納本補償金を得ようとする事例が生じている。NLKは、内部規定(国立中央図書館資料納本収集規程、国立中央図書館納本業務指針)により、納本除外を可能とする資料の範囲等を定めて対処してきたが、このような法定納本制度の例外処理が、法律ではなく内部規定に依拠している点について、法的根拠の明確性の側面から限界が指摘されていた。2025年の納本補償金額が過去最高の約17億4,000万ウォン(2025年12月分報告省令レート換算で約1億8,400万円)に達し、保存価値が十分ではない資料の納本による補償金の過剰支出や保存スペース不足といった懸念が高まる中で、納本除外に関するより明確な法的根拠の整備が求められていた。

●法改正の概要

  今回の法改正に当たっては、個別に発議された3本の法案が、文化体育観光委員長により1本にまとめられた。主要な内容は次のとおりである。

  納本対象については、発刊登録番号が付与された公共刊行物、デジタル形式の学位論文(修士、博士)、UCIに基づく識別子が付与された電子出版物が追加された(第21条第1項)。また、NLK館長が、国、地方公共団体及び公共機関の長に対し、納本への協力を要請することが可能となり、各機関の長は、特別な事情がない限り、これに応じることが義務付けられた(第21条第3項)。

  納本除外・納本部数調整については、NLK館長による調整が法律レベルで可能となった(第21条第5項)。あわせて、納本・収集対象資料の選定及び選定基準に関する事項、納本除外及び部数調整に関する事項等を審議するために、NLK館長が図書館資料審議委員会を置くことが可能となった(第22条の2)。元々、同名の委員会を置くことは可能で(図書館法施行令第17条)、納本除外に関する審議も行っていた。しかし、納本除外の審議を行う根拠はNLKの内部規定の方に留まっていたため、こちらも法律レベルの根拠を整備したものである。

  また、納本補償金を受けた者が不正請求を行っていた場合等に、文化体育観光部長官が、補償金の回収等の措置を行う根拠が整備された(第22条の3)。

●韓国国内の反応

  法案の審議過程において、韓国図書館協会は、納本制度が国の知識資源の網羅的な収集を基本原則とするものであると指摘した上で、納本除外等の規定については、慎重な検討が必要であるとの意見を提示していた。AIを活用したという理由だけで納本除外できるわけではなく、判別基準や審議方式について、今後の検討が必要との指摘もある。

  一方、NLKは、2026年6月23日に、「ウェブコンテンツUCI制度運営協議体」会議を開催し、ウェブトゥーンやウェブ小説に対するUCIに基づく識別子の付与状況を報告するとともに、納本の案内方法や補償金の基準に関して議論を行った。同年10月頃に、業界関係者向けの説明会を開催する予定とされている。

Ref:
“도서관법(법률 제21745호, 2026. 6. 2., 일부개정)”. 국가법령정보센터.
https://law.go.kr/LSW/lsInfoP.do?lsiSeq=286441&efYd=20261203#0000
“[2218534] 도서관법 일부개정법률안(대안)(문화체육관광위원장)”. 의안정보시스템.
https://likms.assembly.go.kr/bill/bi/billDetailPage.do?billId=PRC_X2Y6X0E3H2A6V1N3T3I0B2T0G5I5N9&currMenuNo=2600044
문화체육관광위원회. 도서관법 일부개정법률안 검토보고 (의안번호 제2215063호). 2026, 17p.
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문화체육관광위원회. 도서관법 일부개정법률안 검토보고(의안번호 제2216368호). 2026, 22p.
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“AI 책 대량 납본에 제동…국립중앙도서관, 거부 근거 생겼다”. 아시아경제. 2026-05-07.
https://view.asiae.co.kr/article/2026050723192876065
“AI가 쓴 책이 ‘내 세금’ 턴다? 논란의 이면 [AI 책 딜레마①]”. 더스쿠프. 2026-02-09.
https://www.thescoop.co.kr/news/articleView.html?idxno=309126
“年9000권 펴낸 AI 출판사 책… 중앙도서관 “납본 안 받겠다””. 조선일보. 2026-02-05.
https://www.chosun.com/culture-life/culture_general/2026/02/05/G3JFHKKNNBAR5EPF2PK55SQANI/
“AI가 9000권 찍어내면, 9000만원 줘야 하는 공공도서관”. 조선일보. 2025-12-02.
https://www.chosun.com/culture-life/culture_general/2025/12/02/2WX4KJQNCZGPPOH6T6JQJ7B7ZY/
“웹툰·웹소설도 국가가 보존한다…12월부터 의무 제출”. 국립중앙도서관. 2026-06-24.
https://www.nl.go.kr/NL/contents/N50603000000.do?schM=view&page=1&viewCount=9&id=57544
“웹툰·웹소설 식별 위한 웹콘텐츠 UCI 본격 시행”. 국립중앙도서관. 2025-09-04.
https://www.nl.go.kr/NL/contents/N50603000000.do?schM=view&page=1&viewCount=9&id=53133
藤原夏人. オンライン資料の納本制度の現在(4)韓国. カレントアウェアネス-E. 2016, (310), E1836.
https://current.ndl.go.jp/e1836