カレントアウェアネス-E
No.373 2019.07.25
E2161
2019年ISO/TC46国際会議<報告>
収集書誌部逐次刊行物・特別資料課・柳澤健太郎(やなぎさわけんたろう)
電子情報部電子情報流通課・奥田倫子(おくだともこ)
2019年5月6日から10日まで,カナダのオタワでISO/TC46(International Organization for Standardization/Technical Committee 46)の国際会議(E2047ほか参照)が開催された。TC46は「情報とドキュメンテーション(Information and Documentation)」を担当する専門委員会である。今回はTC46総会と4つの分科委員会(Subcommittee:SC)の各総会及び作業部会(Working Group:WG)が開催され,日本から4人が参加した。以下,国立国会図書館からの参加者(筆者)が出席した「技術的相互運用性(Technical Interoperability)」を担当する第4分科委員会(SC4)と「識別と記述(Identification and Description)」を担当する第9分科委員会(SC9)の会議について,概要を報告する。
SC4の第16作業部会(WG16)では,ダブリンコアメタデータイニシアチブ(DCMI)が維持してきた「DCMIメタデータ語彙(DCMI Metadata Terms)」の国際規格化の作業を行っている。ただし,今回の会議は5月14日期限の国際規格原案(ISO/DIS 15836-2)の投票期間中に当たっていたため,ISOの規約に基づき,規格内容についての公式審議は行わず,現況の報告と今後の活動方針についての意見交換を行った。後日の投票結果によれば,規格原案は承認された。また,SC4が,ISOと国際電気標準会議(IEC)との第1合同技術委員会の第34分科委員会(JTC1/SC34)及びIECの第100技術委員会(IEC/TC100)と合同で設置する共同作業部会(JWG7)では,EPUBに関する4つの国際標準化案件を審議している。そのうち,今回の会議では,長期保存のためのEPUB仕様についての技術仕様書(ISO/IEC PDTS 22424)とアクセシビリティの高いEPUB仕様のISO規格化(ISO/IEC CD 23761)のユースケース等について議論した。
SC9では,「国際標準逐次刊行物番号(International Standard Serial Number(ISSN))」(ISO 3297:2017)の改訂,デジタルアーカイブの「権利情報の記述と表示(Description and Presentation of Rights Information)」(ISO/CD 22038)の検討,技術報告書「識別の原則(Principles of Identification)」(ISO/CD TR 22943)の策定,RAiD(Research Activity Identifier)の規格制定のためのWGが開催された。「ISSN」のWGでは,ISSN国際センター長でもあるフランスのベケ(Gaëlle Béquet)氏をコンビーナ(取りまとめ役)として,2019年1月から3月にかけて行われた国際規格原案(ISO/DIS 3297)の投票にあたり寄せられた意見の検討が行われた。「権利情報の記述と表示」のWGでは,規格案について,規定的内容を含まないため,国際規格ではなく技術報告書として草案を作り直す方針について合意した。「識別の原則」のWGでは,ISBNやISSN,DOIといったISO規格となっている識別子の情報流通における役割と望ましい属性についての明文化を目的として,2019年1月から草案策定作業を行っている。会議では,望ましい属性として「一意性(uniqueness)」や「永続性(persistence)」の定義について議論した。引き続き,遠隔会議において議論を進め,2019年12月までに委員会草案の回付を目指す。「RAiD」のWGでは,研究プロジェクトの識別子として提案されているRAiDについて,新作業項目(ISO/NP 23527)の投票にあたり寄せられた意見等をめぐって話し合った。
TC46総会と,各分科委員会の総会においては,管轄する活動の全体について報告され,重要事項の決議が行われた。以下は,TC46総会での主な決議事項である。
- (1)SC4については,現議長の任期が2020年12月31日に満了するが後任議長・事務局が未定のため,次期議長及び事務局候補を募る。
- (2)文字著作(textual work)の識別子である「国際標準テキストコード(International Standard Text Code(ISTC))」(ISO 21047:2009,E1044参照)については,登録機関(Registration Authority)が業務を停止したために規格自体の存廃を検討する。
- (3)登録機関を設けずブロックチェーン上で管理する,電子ファイルの識別子「国際標準コンテンツコード(International Standard Content Code(ISCC))」に関しては,予備業務項目の形で規格化の検討を開始する。
次回のISO/TC46国際会議は2020年5月に英国ロンドンで開催される予定である。