カレントアウェアネス-E
No.351 2018.07.26
E2047
2018年ISO/TC46国際会議<報告>
2018年5月14日から18日まで,ポルトガルのリスボンでISO/TC46(International Organization for Standardization/Technical Committee 46)の国際会議(E1833ほか参照)が開催された。TC46は「情報とドキュメンテーション」を担当する専門委員会である。今回はTC46総会と4つの分科委員会(Subcommittee:SC)の各総会及び作業部会が開催され,日本から3名が参加した。筆者は「技術的相互運用性(Technical Interoperability)」を担当する第4分科委員会(SC4)の作業部会と総会,「識別と記述(Identification and Description)」を担当する第9分科委員会(SC9)の作業部会と総会,及びTC46総会に参加した。以下,筆者が参加した会議について,概要を報告する。
まず,SC4の作業部会において,ダブリンコアメタデータイニシアチブ(DCMI)が策定・維持してきた「DCMIメタデータ語彙(DCMI Metadata Terms)」の国際規格化の作業が進んでいる。DCMIが維持管理するメタデータ標準としては,タイトルや作成者など,情報資源の記述に用いる基本的な15項目の要素から成る「ダブリンコアメタデータ基本記述要素集合(DCMES)」が,2003年に国際規格(ISO 15836)になっている。2016年のSC4総会で,DCMESをPart 1(ISO 15836-1)とし,DCMIが2008年に公開した「DCMIメタデータ語彙」において定める55の属性と22のクラスを,新たにPart 2として国際規格化する方針が決定された。昨年のSC4総会では,Part 2を国際規格化するための作業部会の設置が決まり,「エキスパート」と呼ばれる作業部会メンバーの選出を経て,今会期中に,第1回作業部会会議が開催された。
作業部会会議には,米国,オーストラリア,カナダ,中国,デンマーク,フィンランド,日本等から,約20名が参加し,「DCMIメタデータ語彙」に加えて,特定分野のグローバル標準として確立しているData Catalog Vocabulary(DCAT),Scholarly Works Application Profile(SWAP),Darwin Coreといった拡張語彙やアプリケーションプロファイルも国際規格に取り込むかどうかが主な論点となった。また,DCMIが維持する標準とISO規格に齟齬がないよう,DCMI側の語彙の管理組織であるDCMI利用委員会と協調して国際規格化を進めることが確認された。本件は2019年末までの国際規格化を目指している。
また,SC9の作業部会としては,14日から15日の2日間にわたって,国際標準逐次刊行物番号(International Standard Serial Number:ISSN,ISO 3297)改訂のための作業部会が開催された。ISSN国際センター長でもあるフランスのベケ(Gaëlle Béquet)氏をコンビーナ(取りまとめ役)として行われたこの作業部会には,米国,イタリア,中国,フィンランド,日本等から約25名が参加し,現在作成中の改訂草案に基づいて検討が進められた。今回の改訂では,電子的な継続資料のフォーマットや刊行形態がますます多様化している現況を踏まえ,それらを規格の「適用範囲(Scope)」に例示すること,また,現在のLinking ISSNの考え方を印刷版とオンライン版というフォーマットの違いに限らず,様々な異版についても応用していくことのできる新しい概念(ISSN Clusterと仮称)の設定などが議論された。
TC46総会と,各分科委員会の総会においては,管轄下の活動全体が報告され,重要事項の決議が行われた。近年の傾向として,TC46全体としては,オンラインの会議参加や資料共有が広く行われ,メンバー間のコミュニケーションの改善と審議の迅速化が図られているように感じた。SC4においては,「DCMIメタデータ語彙」の例に見られるように,既に確立した外部標準のISO規格化が積極的に進められていること,また,多数の識別子の規格を維持しているSC9においては,内部規約の改訂等によって各識別子の登録機関(Registration Authorities)に対する統制をISO中央事務局が強化していることがうかがい知れた。
筆者はISO/TC46の国際会議に初めて参加したが,World Wide Web Consortium(W3C)やインターネット技術タスクフォース(IETF),各国国内団体など様々な標準化機関がある中で,ISO/TC46による規格化の意義として,次の2点があると感じた。まず,「定期見直し」という手続きを通じて,所管する規格が常に有効性を維持できるよう,技術の変化や関連する目録規則等の変更に応じた更新を行っている点である。2つ目に,エキスパートが所属する機関の多くは,国立図書館や業界団体など,規格の策定機関であると同時に利用機関であり,ISOは利用する側のニーズが規格に反映される場でもあるという点である。欧米においては国立図書館にTC46の国内委員会が設置されている例があり,中国や韓国からの参加人数も大幅に増えているのに比べ,近年,日本からは参加人数が減少傾向にあり,活動資金も十分とは言えない。今後,国内においても異分野連携が進み,日本に関する情報の国際的発信への期待も高まる中,国際標準化活動への理解の裾野を広げ,活動に貢献できる人材を育成していくことが喫緊の課題と思われる。
次回のISO/TC46国際会議は2019年5月にオタワのカナダ国立図書館・文書館(LAC)で開催される予定である。
電子情報部電子情報流通課・奥田倫子
Ref.
http://www.ndl.go.jp/jp/dlib/standards/meta/about_dcndl.html
http://www.ndl.go.jp/jp/dlib/standards/translation/dcmi-terms.htm
https://www.w3.org/TR/vocab-dcat/
http://www.ukoln.ac.uk/repositories/digirep/index/SWAP
http://rs.tdwg.org/dwc/
http://www.gbif.jp/v2/activities/DwCA_for_ecology_data.html
http://www.ndl.go.jp/jp/data/bib_newsletter/2018_1/article_02.html
http://www.ndl.go.jp/jp/data/issn/index.html
E1833