E1059 – 2010年のISO/TC46国際会議が開催される <報告>

カレントアウェアネス-E

No.172 2010.06.10

 

 E1059

2010年のISO/TC46国際会議が開催される <報告>

 

 2010年5月10日から14日まで,韓国の済州島において,国際標準化機構(ISO)の情報とドキュメンテーション専門委員会(Technical Committee 46:TC46)の国際会議が開催された(E942参照)。日本からの参加者は,国立国会図書館から筆者を含め2名,他1名であった。

 2010年度は,TC46の総会,およびその分科会(SC)である「技術的な相互運用性(SC4)」「識別と記述(SC9)」「文書・記録管理(SC11)」それぞれの総会やワーキンググループ(WG)等が開催された。

 筆者はTC46総会およびSC9の各会議に参加した。ここではSC9の各会議の様子を中心に紹介したい。近年SC9の中心となっているテーマは「情報の連携」である。SC9は,ISBN(国際標準図書番号),ISSN(国際標準逐次刊行物番号),ISMN(国際標準楽譜番号)といった「識別子」に関する規格を扱う。これまでは領域ごとの情報を管理してきたが,情報量が多くなる中,たとえばある人物が書籍・レコード・映画を作った場合それぞれの識別子をリンクできないか,といった,領域を超えた情報のやりとりに対する要望が高まってきたため,新しい規格の提案や情報の連携をテーマにした会議の開催といった動きが起きている。

 今回の国際会議では,「識別子を連携させるための識別子」として,2009年に引き続き,ISNI(International Standard Name Identifier:創作者等の名称に関する識別子)の策定を担当しているWGの会議が開催された。規格案への投票の際に各国から寄せられたコメントについて吟味し,規格案の細かい文言や定義などについて必要な改訂作業を行った。この識別子が広く使われるようになると,音楽や映像,文章といった境界を超えて著作者等の情報を管理することが容易になると期待されている。

 同じく2009年に続いて開催されたIIG(Identifier Interoperability Group:識別子間の相互運用性検討グループ)の会議では,各識別子間の相互リンクを想定してそれぞれのデータベースに含まれる要素(著作者・演奏者・出版者等)を見直す案や,音楽に関する2つの識別子ISRC(International Standard Recording Code:国際標準レコーディングコード)とISWC(International Standard Work Code:国際標準著作物コード)を関連付けてデータベースを作る案等について,活発な議論があった。また,情報の連携を検討する上で参考になる試みとしてVMF(Vocabulary Mapping Framework;E1011参照)の紹介があった。

 SC9総会では,ここ1年の動きを中心に報告があった。領域を超えた連携だけではなく,単独の識別子においても,DOI(Digital Object Identifier:デジタルオブジェクト識別子。すでに広く利用されているが,ISO規格ではない)のISO規格化の進行,シソーラスや音声に関する識別子の提案など,情報に関する識別子の世界が活発に動いていることが感じられた。

 次回は2011年5月にオーストラリアのシドニーで開催される予定である。

(収集書誌部・河合将彦)

 

Ref:
http://www.iso.org/iso/standards_development/technical_committees/other_bodies/iso_technical_committee.htm?commid=48750
E942
E1011