E1833 – 2016年ISO/TC46国際会議<報告>

カレントアウェアネス-E

No.309 2016.08.18

 

 E1833

2016年ISO/TC46国際会議<報告>

 

 2016年5月9日から13日まで,ニュージーランドのウェリントンでISO/TC46(International Organization for Standardization/Technical Committee 46)の国際会議(E1693ほか参照)が開催された。TC46は「情報とドキュメンテーション」を担当する専門委員会である。今回はTC46総会と5つの分科委員会(Subcommittee:SC)の総会及び作業部会が開催され,日本から4名が参加した。筆者は「識別及び記述」(Identification and Description)を担当する第9分科委員会(SC9)の国内委員としてSC9の作業部会,総会及びTC46総会に参加した。以下SC9の会議内容を中心に報告する。

 今年のSC9の日本に関連する主なトピックとしては2点が挙げられる。1つはISO 20247国際図書館資料識別子(International Library Item Identifier:ILII;CA1872参照)のCD(Committee Draft:委員会原案)投票が今回の作業部会を契機として開始されたことである。2015年9月にWD(Working Draft:作業原案)がSC9事務局に提出されていたが,その後の進捗が確認できなかったため,作業部会で原因を確認したところ,SC9事務局のスタッフ側の事務手続き上の問題で進捗が滞っていたことが判明した。開発を速やかに進めるため,CD投票の開始期限を今年のSC9総会での決議に加えるよう提案がなされ,SC9総会において採択された。これにより5月16日に各国宛にCD投票の手続き開始が通知された。その後7月16日に投票が締め切られ,結果は賛成15,コメントつき賛成3,反対1,棄権12で可決された。今後はコメント内容をWG内で精査し,12月頃にDIS(Draft International Standard:国際規格案)投票を開始できるよう準備を進める予定である。ISO規格の開発は,本来こうした調整や確認を必要とせず,所定のルールに従いシステマチックに進むものであるが,今回のように膠着の原因が不明確な場合,対面で状況を確認し,対応を協議することも必要であると実感した。

 もう一つは,日本から提案予定の規格(Description and Presentation of Rights Information in Digital Collections)について,SC9総会で国立情報学研究所名誉教授の宮澤彰氏によるプレゼンテーションが行われたことである。この提案は,デジタルアーカイブの構築と利用が進む中で,著作権や権利に関する情報の不明瞭さが二次利用の際の障壁となっている現状を改善し利活用を活発化させるために計画された。デジタルアーカイブの権利や著作権の情報は,一般的にデジタルアーカイブが掲載されたウェブページ上に記載されるが,どこにどのような形で掲載されているかは千差万別であり,利用者が見つけ出すのが困難なこともしばしばである。そこでデジタルアーカイブの個々のアイテムの画面上に権利情報そのもの,あるいは,記載があるページへのリンクを表示することで,著作権や利用に関する条件を利用者が一目で分かるようにガイドラインを定めることが本規格の趣旨である。プレゼンテーションに対しては様々な質問やコメントが寄せられ,参加者の関心の高さが窺えた。中でも,対象となるデジタルアーカイブに商用のものも含まれるのか,という質問は国際規格の開発において重要な指摘であると感じた。規格の原案では,日本国内におけるデジタルアーカイブの多くが大学をはじめとする研究機関や公的機関によって運用されているため,商用のものは主な対象としては想定していなかった。しかし諸外国においては必ずしも日本と同じ状況ではなく,提案段階では商用のものを主に想定しない記述ではあっても,今後の国際規格化にあたり,提案に対するコメント等を検討して方針を定める必要がある。また各国のデジタルアーカイブをめぐる状況を精査し,それらに対応することが必要であると感じた。なお,宮澤氏から新業務項目提案(NWIP)として2016年6~7月頃に提出予定である旨報告された。その後,7月3日に予定どおりNWIPが提出された。近くNWIPの投票手続きが始められる予定である。

 その他のSC9での話題としては,国立国会図書館が日本センターとして,国内における番号の付与や維持管理を行っている国際標準逐次刊行物番号(ISSN)に関する規格ISO 3297の改訂がある。ISO規格は5年ごとに定期見直しが行われ,ISSNは2016年が改訂の年に当たるが,それに先立ってISO 3297の部分改訂が開始され,今年4月にISSNの付与を無料とする旨の文言の削除が可決された。ISSN国際センターの担当者からは,ISO規格の規定上,料金(契約)に関する内容を規格本体に記載できないためという説明がなされたが,この改訂は将来的にISSN付与の有料化を招く危険性があり,日本の国内委員会は部分改訂投票に反対票を投じている。

 筆者は昨年に引き続き本会議に参加したが,印象に残ったのは中国・韓国からの参加者の増加とその活動の活発化である。今回中国は20名,韓国は15名が参加登録を行っており,活動面でも,統計及び評価を担当する第8分科会(SC8)の事務局長を今年から韓国標準協会のメンバーが務めるなど存在感を示している。近年は日本も新規格の提案を行うなど積極的な活動を行っているが,標準化に関する活動を担う人材の裾野を広げ,こうした国際会議により多くのメンバーが参加できれば,日本の存在感も高まり,より一層の貢献が可能ではないかと思われた。

 次回のISO/TC46会議は2017年5月に南アフリカのプレトリアで開催される予定である。

収集書誌部収集・書誌調整課・松田稔広

Ref:
http://www.iso.org/iso/standards_development/technical_committees/list_of_iso_technical_committees/iso_technical_committee.htm?commid=48750
http://www.iso.org/iso/home/standards_development/list_of_iso_technical_committees/iso_technical_committee.htm?commid=48836
http://www.infosta.or.jp/iso/tc46/mctc46sc09.html
http://www.iso.org/iso/catalogue_detail.htm?csnumber=67408
http://ci.nii.ac.jp/naid/110009975752
http://www.iso.org/iso/catalogue_detail?csnumber=39601
http://www.iso.org/iso/iso_technical_committee?commid=48826
E1693
CA1872