カレントアウェアネス-E
No.259 2014.05.22
E1565
2014年ISO/TC46国際会議<報告>
2014年5月5日から9日まで,米国のワシントンD.C.で,ISO/TC46(International Organization for Standardization / Technical Committee46)の国際会議が開催された。TC46は「情報とドキュメンテーション」を担当する専門委員会である。今回は,TC46総会と5つの分科委員会の総会及び作業部会が開催され,日本からはISO加盟機関である日本工業標準調査会(JISC)の代表として,国立国会図書館をはじめとする4機関4名が参加した。
今回の大きな成果として,日本が提案する「国際図書館資料識別子(International Library Item Identifier:ILII)」(仮称)に関して,ISO規格化へつながる「新業務項目提案(NWIP)」の提出が了承されたことが挙げられる。これは,昨年の会議において,技術的相互運用性を扱う第4分科委員会(SC4)でRFIDタグ規格の一部として議論され,議論の結果RFIDタグ規格から切り離して,改めて識別と記述を扱う第9分科委員会(SC9)での規格化を探ることになっていた案件である(E1451参照)。昨年の会議以降,日本の国内委員会では検討ワーキンググループを立ち上げ,今回の会議での提案プレゼンテーションに向けて準備を進めていた。
ILIIは,図書館をはじめとする情報提供機関が所蔵する個別資料(FRBRのitemに相当する単位)に付与する識別子で,「図書館及び関連組織のための国際標準識別子(ISIL)」(CA1757参照)に各機関の資料管理番号を付与する形で構成される。SC9総会で行った日本の提案プレゼンテーションに対しては,各国参加者から質問や使用範囲等のアイデアが多数寄せられ関心の高さが伺えた。今後は,日本から正式にNWIPを提出し,そのNWIPが承認されれば,SC9において規格の開発作業が進められることとなる。
その他,今回の会議では,ISO 3166(国名コード)やISO 28560(図書館におけるRFIDタグ)など様々な規格の策定・改訂について議論された。会議の参加を通して筆者が興味深く感じたのは,専門委員会及び分科委員会と“外部リエゾン”と呼ばれる他機関との提携である。ISO規格の開発には,他機関が制定する関連標準・規格とISO規格との間の不整合を減らすために,関連する他機関とリエゾン関係を結び情報交換や会議への相互出席を行う仕組みがある。Dublin Core Metadata Initiative(DCMI)や国際図書館連盟(IFLA)などの標準化団体が多数存在し,そのそれぞれがDublin Core Metadata Element Set(DCMES)やUNIMARCのような標準・規格を策定しているデジタル分野においては,関連機関との提携が特に重要となることに気付かされた。
会場では,リエゾン機関から派遣された参加者も目立ち,この仕組みが有効に働いていると感じた。その一方で,電子書籍の規格化に向けてEPUB規格を策定する標準化団体International Digital Publishing Forum(IDPF)と提携中のワーキンググループからは,IDPF側とのやり取りが上手くいかず作業が進められない旨の報告があるなど,こうした提携が簡単には行かない様子も見て取れた。
ISO/TC46会議には,標準化団体や研究者のみならず,各国の国立図書館をはじめとする図書館からの参加者もおり,図書館員自らが図書館や情報に関係する国際規格の開発に携わる姿が見られた。今回の会議に参加して,国際規格の開発へ日本の関与が求められていることを感じたが,現在,日本の図書館界では,他国と比較するとISO規格を使うことはあってもその開発に貢献することの重要性が充分に認識されているとは言い難い。2015年のISO/TC46会議は,6月に北京で開催される予定である。隣国での開催を契機に,日本でもISO/TC46の活動により多くの注目が集まることを期待したい。
電子情報部電子情報流通課・橋詰秋子
Ref:
http://www.iso.org/iso/standards_development/technical_committees/list_of_iso_technical_committees/iso_technical_committee.htm?commid=48750
http://www.iso.org/iso/country_codes
http://biblstandard.dk/rfid/
E1451
CA1757