E1451 – 2013年ISO/TC46国際会議<報告>

カレントアウェアネス-E

No.240 2013.07.11

 

 E1451

2013年ISO/TC46国際会議<報告>

 

 2013年6月3日から7日まで,フランスのパリでISO/TC46(International Organization for Standardization/Technical Committee 46)の国際会議が開催された。TC46は「情報とドキュメンテーション」を担当する専門委員会である。日本からは筆者を含め5名が参加し,筆者は「技術的相互運用性」を扱う第4分科会(SC4)及びTC46全体の総会に参加した。ここではSC4の会議を中心に報告する。

 今回SC4で議論されたテーマの内,大きなものは,図書館におけるRFIDタグ(ISO 28560)と図書館間貸出(ILL)に関する新規格(ISO 18626となる予定)の検討である。

 図書館におけるRFIDタグについてはISO 28560-1,28560-2,28560-3という3つの規格がある。英国の提案がISO 28560-4,日本の提案がISO 28560-5として,2012年に新規検討事項として承認され,これまで主にメールベースでの検討が進められてきた。日本は,UHF帯のRFIDタグについて,タグ中のUII(Unique Item Identifier)によって個々のRFIDタグを一意に識別可能とするため,UIIに収録されるデータが国際的に一意となることが重要である旨を主張し,ISIL(CA1757参照)を用いて一意性を確保する方法を推奨することを求めていた。今回の会議においてもその点を含めて議論を行ったが,RFIDの利用に伴うプライバシー問題について扱うEU規格が検討中であること等から,欧州諸国の賛成を得ることができなかった。結果としてISO 28560-4 に日本の主張を反映させることはできず,また,日本が提案したISO 28560-5は図書館におけるRFIDタグの規格からは切り離すこととし,SC4では取り下げて,SC9(識別と記述を扱う分科会)での検討に移すこととなった。規格のスコープを再検討し,SC9で改めて新規格としての提案を行っていくことになる想定である。

 ILLについては,昨年のISO/TC46会議(E1300参照)を受けて行われた,新規格の検討結果が説明された。新規格はWebの時代に対応し,より広く簡便に使ってもらえるようにすることを意図している。セッションの状態を保存しないステートレスなプロトコルにすること,アプリケーション側で必要なコードを定められるようにすること,メッセージの移送はHTTPで行うこと,既に図書館システム側で普及している“NISO Circulation Interchange Protocol(NCIP)”を参考にXMLスキーマを定めること等が重要課題として説明された。今回の議論を踏まえた修正を行って規格化を進めていくことが了承され,ドラフトの作成を進めることとなった。ドラフトは今夏には提出される予定である。なお,カナダ国立図書館・公文書館が務めていた現行ILL規格(ISO10160,ISO10161)のMaintenance Agencyは解散することとなったが,現行規格自体は今後もSC4で維持していく。

 その他のSC4のトピックとしては,Dublin Core Metadata Initiative(DCMI)のSC4へのリエゾンとしての登録,EPUBドキュメントの長期保存に向けたEPUB3(CA1796参照)の拡張に関する共同ワーキンググループの検討,BIBFRAME(E1386参照)の動向を注視すること,先日OASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards)標準となったSRUのFast Track(迅速な標準化のために,一定の条件を満たした既存の規格については一部の手続きを省略できる制度)でのISO化を図ること等が報告された。またアーカイブ情報の交換について,フランス規格協会で検討中の規格の説明があり,記録管理を扱うSC11とSC4が協力して検討していくこととなった。

 TC46全体の総会では各分科会,ワーキンググループ等からの報告と決議の採択が行われた。大きなトピックとしては,SC10の再開が挙げられる。SC10は以前,“Physical Keeping of Documents”という名称で活動していたが,近年は活動レベルを変更し,TC46直下のワーキンググループWG6として活動していた。今回“Requirements for document storage and conditions for preservation”と名を改めて,SC10として活動を再開することになる。

 国内の関係者の協力を得て検討してきた日本の主張・提案は,今回のSC4では採用されなかった。とはいえ,このように日本からの提案を国際会議の場で展開していくことは今後も必要であろう。図書館や情報の世界ではISO規格に限らず,多くの国際規格を利用しているが,よい標準を考えていくためには関係諸氏の協力が不可欠である。国際標準となったものを使うだけではなく,国際標準を作りだす活動への,より多くの理解と協力が望まれる。

 2014年のISO/TC46会議は5月にワシントンD.C.で開催される予定である。

(電子情報部電子情報サービス課・川瀬直人)

Ref:
http://www.iso.org/iso/standards_development/technical_committees/list_of_iso_technical_committees/iso_technical_committee.htm?commid=48750
http://www.iso.org/iso/standards_development/technical_committees/list_of_iso_technical_committees/iso_technical_committee.htm?commid=48798
E1386
E1300
CA1796
CA1757