E2883 – 日本図書館研究会第67回研究大会シンポジウム<報告>

カレントアウェアネス-E

No.523 2026.05.28

 

 E2883

日本図書館研究会第67回研究大会シンポジウム<報告>

熊本学園大学商学部・山田美幸(やまだみゆき)

 

  2026年3月7日と8日に、日本図書館研究会第67回研究大会が京都市内(7日:同志社大学新町キャンパス、8日:キャンパスプラザ京都)で開催された。1日目には個人研究発表とグループ研究発表、2日目は「メディア情報リテラシー:フェイクニュース等に対して図書館で何ができるのか」をテーマにシンポジウムが行われた。本稿では、シンポジウムの概要を報告する。

  まず、研究委員の今野創祐氏(東京学芸大学)からの挨拶とシンポジウムの趣意説明が行われた。ユネスコは、メディアリテラシーと情報リテラシーを統合した概念として「メディア情報リテラシー」(MIL)を提示している。SNS上の真偽不明な情報や、多様化するマスメディア情報への向き合い方が課題となる中、図書館関係者には、情報を評価・活用する力を育む役割が求められている。これまで図書館ではデータベース検索などの利用指導は行われてきたが、情報を批判的に吟味するMIL教育は十分に普及してこなかった。本シンポジウムでは、公共・学校・大学図書館が連携し、MIL教育を実践する具体策について検討することが示された。

  初めに、鎌田均氏(京都ノートルダム女子大学教授)が「撹乱する情報社会におけるメディア情報リテラシーと図書館」と題して講演を行った。フェイクニュースや誤情報がSNSや生成AIの発展によって拡散しやすくなり、民主主義や社会に大きな影響を与えている現状を説明した。その上で、現在の情報環境は非常に複雑で、膨大な情報量の中で、人間には「信じたいものを信じる」傾向があることを指摘し、情報を批判的に読み解くMILが重要であると説いた。さらに、信頼できる情報を提供する機関として、情報リテラシー教育やワークショップを通じて社会の情報環境を支える役割を図書館には期待できるとした。

  次に、坂本旬氏(法政大学教授)が、「国内外におけるメディア情報リテラシーとデジタル・シティズンシップ教育政策の現状」と題して、MILとデジタルシティズンシップ(DC)が一体化した国際的潮流を解説し、民主主義や市民参加を支える教育としてMILの重要性を説いた。一方、日本は国際的動向への対応が遅れており、ネットでやってはいけないことを並べた「情報モラル教育」から、責任ある行動と価値創造に重きをおいたDC教育の重要性を強調した。加えて、若者が主体的に情報を発信・創造する力を育てる実践を紹介、国際的な連携と継続的な取り組みの必要性を説いた。

  野末俊比古氏(青山学院大学教授)は大学図書館における情報リテラシー教育の役割について、フェイクニュースや誤情報問題を踏まえて論じた。そして、個人に高度なリテラシーを求めるだけでなく、AIなどを活用して「使いやすい情報環境」を整備する重要性を指摘した。大学図書館は信頼性の高い学術情報を扱ってきた経験を生かし、情報の出典や媒体、発信意図を批判的に読み解く学生の力を育成すべきだと述べた。そして、他館種と連携しながら、大学図書館はMIL育成に貢献できるのではとも述べた。一方、デジタルネイティブ世代に対し、メディア構造そのものを理解する教育の必要性を強調した。

  尾高泉氏(日本NIE学会常任理事)は、情報流通がSNSや動画、AIへ広がる中、情報の真偽だけでなく「情報がどう作られ、流通するか」を理解する重要性を指摘した。新聞やジャーナリズムは民主主義を支える公共的役割を担っており、学校図書館は多様な情報や他者に出会う場として機能すべきだと述べた。さらに、学校司書による新聞活用やファクトチェック教育の実践を紹介し、調べ続ける姿勢や他者理解の重要性を強調した。

  その後、家禰淳一氏(愛知大学教授)がコーディネーターとなり、誤情報・偽情報が民主主義や社会分断にも関わる課題であることを踏まえ、図書館には情報の真偽を一方的に判断するのではなく、利用者が情報の信頼性や背景を考える力を支援する役割が求められるとの意見が共有された。また、新聞やニュースに触れる経験の重要性、学校図書館や公共図書館によるMIL教育、ファクトチェック実践の必要性も議論され、図書館が地域社会における公共的な学びの場として果たす役割の大きさが確認された。

  なお、シンポジウムの詳細な記録は同研究会の『図書館界』に掲載予定である。興味関心がある方はぜひとも参照されたい。

Ref:
“日本図書館研究会 第67回研究大会(ご案内)”. 日本図書館研究会.
https://www.nal-lib.jp/67taikai/
“Media and Information Literacy”. UNESCO.
https://www.unesco.org/en/media-information-literacy