E2878 – 日本スポーツミュージアムネットワークの発足について

カレントアウェアネス-E

No.522 2026.05.14

 

 E2878

日本スポーツミュージアムネットワークの発足について

独立行政法人日本スポーツ振興センター秩父宮記念スポーツ博物館・ 三澤亮太(みさわりょうた)

 

  2026年2月12日、独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)秩父宮記念スポーツ博物館は、スポーツ資料を所蔵する団体が協働する持続的な連携基盤として「日本スポーツミュージアムネットワーク」を発足させた。本ネットワークは、大学、地域ミュージアム、オリンピック関連ミュージアム、競技団体、民間企業など、多様な主体が連携する国内初の取り組みであり、スポーツ文化の継承とその意義の発信を通じて社会に貢献することを目的としている。

  国内には大学・自治体・競技団体・民間組織による多様なスポーツ系博物館・資料館が存在する一方、専門人材の不足、収集・保存体制の脆弱さ、展示内容の固定化、資料の分散などの課題が指摘されてきた。こうした共通課題を共有し、単独では対応が難しい領域を協働で補完する枠組みとして、恒常的ネットワークの必要性が高まっていた。

  秩父宮記念スポーツ博物館は、令和7年度文化庁「Innovate MUSEUM事業」の採択を受け、国内外の先進事例調査と国内連携基盤の構築に向けた準備を進めてきた。準備期間中は、中京大学スポーツミュージアム、わかやまスポーツ伝承館、日本オリンピックミュージアム、札幌オリンピックミュージアム、野球殿堂博物館の5団体とともに、オンラインを含む計7回の準備会議を開催し、現状分析及びネットワークの基本的方向性について議論を重ねた。また、海外調査ではオーストラリアや韓国等の先進事例を調査し、スポーツ資料を文化財として扱う制度整備や、共有基盤の必要性が確認された。

  ネットワークの発足に合わせて開催したシンポジウムでは、スポーツ資料の目録作成の効率化、専門人材の体制整備、資料利活用における権利処理、スポーツ博物館・スポーツ資料の定義など、現場学芸員・職員が抱える課題が提示された。参加者からは、個々の館だけでは解決が難しい論点こそネットワークによる協働によって進展が期待されるとの声が寄せられた。

  2026年3月27日時点では、スポーツミュージアム、大学、競技統括団体、民間企業など16団体が参加登録し(参加費無料)、今後も幅広い主体が参加できる開かれたネットワークとして参加団体を募集している。活動の柱としては、1)横断的なスポーツ資料の情報検索と共有、2)共同展示・共同調査、3)専門人材の育成、4)国際連携の推進を掲げ、とりわけ全国的な資料の「見える化」を重視している。これは資料の所在情報を共有し、将来の共同研究や企画展示の基盤を形成するものである。

  スポーツ資料は、競技という枠を超えて社会・文化・歴史の理解に寄与する重要な文化資源である。韓国では2026年度開館予定の国立スポーツ博物館を中心に、スポーツ関係資料の文化財化が進められるなど、スポーツを社会的資源として捉える国際的な動向の一端が見られる。今回のネットワーク発足は、日本におけるスポーツ文化の体系的保存と継承を進めるうえで大きな一歩となる。

  ネットワーク事務局は秩父宮記念スポーツ博物館が担い、今後、共同展示、研修会などを通じ、参加団体が継続的に協働できる体制を整備していく。始まったばかりの取り組みではあるが、分散しがちなスポーツ資料の共有・活用を促し、スポーツ文化の価値を社会に広く伝えていく基盤として発展させていきたい。

Ref:
日本スポーツ振興センター. NEWS RELEASE―国内初、スポーツ資料所蔵団体による持続的な連携基盤―「日本スポーツミュージアムネットワーク」発足 16団体が参加登録、連携団体を広く募集中. 2026.
https://www.jpnsport.go.jp/corp/Portals/0/News-Release/R7/20260327_release.pdf
スポーツ文化共創「つながる」プロジェクト.
https://www.jpnsport.go.jp/Portals/0/sportmuseumnet/tsunagu/
秩父宮記念スポーツ博物館.スポーツミュージアムネットワークシンポジウム. 2026.
https://www.jpnsport.go.jp/muse/Portals/0/muse/pdf/symposium_20260212.pdf
秩父宮記念スポーツ博物館. 令和7年度 スポーツ文化共創「つながる」プロジェクト事業「国内外スポーツミュージアム事例調査」報告書. 2026, 53p.
https://www.jpnsport.go.jp/Portals/0/sportmuseumnet/tsunagu/assets/pdf/jpnsport_Case-Study-Report_260220.pdf