カレントアウェアネス-E
No.480 2024.05.30
E2701
第19回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>
関西館図書館協力課・レファレンス協同データベース事業事務局
2024年3月1日、国立国会図書館は、第19回レファレンス協同データベース(レファ協)事業フォーラム(E2601ほか参照)をオンライン形式で開催した。今回のフォーラムは「レファレンススキルの磨き方―調べものの専門家になるために―」をテーマとし、レファレンス業務に携わる図書館員のスキルアップ術に焦点を当てた内容で行われた。
はじめに、喜多あおい氏(株式会社ズノー知的生産計画室室長)から「“調べる”のポテンシャル~問題解決力と生産力を手に入れる~」というタイトルでオープニングスピーチが行われた。テレビ番組等の企画・制作に関するリサーチャーとしての豊富な経験を踏まえ、実際に調べる際のアプローチの仕方、クライアントのニーズを把握することの大切さ、調査能力を高めるための取組等について、独自の視点に基づき紹介がなされた。
次に、レファレンススキルの研さんや継承のため、研修等で特色のある取組を実施しているレファ協参加館3館の担当者が登壇し、それぞれの館の実態に即して報告が行われた。
上岡真土氏(高知県立図書館)からは、「日々、触れることで磨かれるオーテピア高知図書館の事例―」と題した報告が行われた。高知県立図書館は高知市立市民図書館と共同でオーテピア高知図書館を運営しており、両図書館の職員間の情報共有の基盤としてグループウェアを導入し、円滑な情報のやり取りを可能としている。館内外での研修への参加に加え、職員有志による地域資料についての勉強会も行われている。また、県立図書館から市町村立図書館への支援にも力を入れており、研修事業や協力レファレンスを行っている。
足立結氏(安城市図書情報館)からは「安城市図書情報館のレファレンスサービス」と題した報告が行われた。職員が交代でレファレンス質問の受付を担当するため、全員が同じレベルで記録が取れるようにレファレンス記録表の記入方法をマニュアル化している。スキルアップへの取組として、過去のレファレンス事例を基に演習問題を作成し、その解答はレファ協の調べ方マニュアルに登録している。館内での全体研修を毎月実施し、過去には、ロールプレイングによる研修やレファレンスツールの紹介を行った。
前之園香世子氏(昭和女子大学図書館)からは「昭和女子大学図書館の事例報告」と題した報告が行われた。利用者である学生向けに情報収集や資料調査に関するセルフラーニングのウェブサイトを構築しており、図書館の新任者研修にも活用している。スキルアップについてはOJTによる経験の積み重ねを重視しており、ファイル共有サービスを利用してレファレンス質問の記録を取り、複数人で内容を共有しながらレファレンス対応をしている。選書やレファレンスコレクションを整備する作業もスキル向上のための大事な作業として位置付けている。
その後、レファ協事業企画協力員の田子環氏(神奈川県立厚木清南高等学校)がコーディネーターとなり、喜多氏、参加館報告者3人、鈴木亜依子氏(安城市図書情報館)、さらにはレファ協事業企画協力員を交えてフリートークが行われた。フォーラム参加者から事前または当日に寄せられた多くの質問の中から、レファレンスインタビューで心掛けている点、レファレンスツール作成の工夫、生成AIとレファレンスサービス等についての質問が取り上げられ、登壇者それぞれの取組や工夫について意見が交わされた。生成AIとレファレンスサービスについては、レファ協事業企画協力員の小田光宏氏(青山学院大学コミュニティ人間科学部教授)から、「レファレンスサービスでは、答えを探すことを中心に考えてしまいがちであり、それはAIを利用する際にも同様である。しかし、「学ぶ」というのは「答えのないこと」を追究することであり、レファレンススキルについても、そうした「分析」にまで踏み込んだスキルが求められるのかもしれない」との総括的なコメントがなされた。
そのほか、レファ協事務局から、2024年2月19日にリニューアルしたレファ協システムの紹介や、レファ協データベースの利活用方法などについて説明を行った。
フォーラム当日の様子は、国立国会図書館公式YouTubeチャンネルでアーカイブ映像を視聴することができる。また、レファ協ウェブサイトにフォーラムの発表資料を掲載しているほか、後日、フォーラムの記録集も同ページに掲載する予定である。
Ref:
“第19回レファレンス協同データベース事業フォーラム「レファレンススキルの磨き方―調べものの専門家になるために―」”. レファレンス協同データベース.
https://crd.ndl.go.jp/jp/about/forum/r5_19.html
“第19回レファレンス協同データベース事業フォーラム「レファレンススキルの磨き方―調べものの専門家になるために―」”. YouTube. 2024-03-28.
https://www.youtube.com/playlist?list=PLXvKjMC1JnVvERPKI0YlCg2fuZaArPbiV
レファレンス協同データベース.
https://crd.ndl.go.jp/reference/
関西館図書館協力課・レファレンス協同データベース事業事務局. 第18回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>. カレントアウェアネス-E. 2023, (457), E2601.
https://current.ndl.go.jp/e2601